大阪大会は8強がそろい、公立勢では八尾が唯一勝ち残った。エース長尾彦秀(よしひで)投手(3年)が初芝立命館を9回6安打で完封した。昨夏独自大会での没収試合を乗り越え、ナインはたくましくなった。1952年に夏の甲子園で準優勝するなど春6度、夏4度の出場を誇る八尾がどこまで快進撃を続けるか、注目だ。

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長尾が右拳を突き出した。9回2死一、二塁。初芝立命館の最後の打者は振り逃げを狙ったが、神園大志捕手(3年)が丁寧に一塁送球してゲームセット。堂々の6安打完封で8強入りし、長尾と神園は優勝したかのようにがっちり抱き合って喜んだ。テンポよく投げ、三塁を踏ませたのは1度だけで6三振を奪った。右腕は「後ろを信じて思いっ切り投げられた。今日は真っすぐの伸びがよかった。90点くらいです」と笑顔。長田貴史監督(44)も「今日はあの子に尽きます。粘り強く丁寧に投げてくれた」とねぎらった。

昨夏の悔しさを球に込めた。大阪独自大会2回戦の美原戦で先発し、コールド勝ち目前の7回に1点を失った。その裏の攻撃で登録外メンバーが代打出場し、既定で没収試合に。結果論だが、長尾が抑えていれば没収試合も起きなかった。「あと1人を抑えていたらコールド勝ちだった。あの1点を悔しく思います」。先輩の思いを背負い、1点の重みを意識し、ブルペンでは1球も無駄にしないよう投げ込んできた。全てのボールに魂を込めた。あれから1年。立派なエースとしてマウンドに立つ。長尾は「一戦一勝で自分で全て抑える気持ちで、最後まで投げ切りたい」と力を込めた。

八尾の8強入りは、100回記念大会で大阪から2校が甲子園に出場した18年の南大阪大会以来、3年ぶり。純粋な大阪大会となると、77年に大体大浪商に2-1で勝って以来、44年ぶりだ。59年夏を最後に遠ざかる聖地に向けて「公立の星」が突き進む。【三宅ひとみ】