今春センバツ8強の智弁学園が2大会連続20度目の夏の甲子園出場を決めた。高校通算35本塁打の1番・前川右京外野手(3年)が、初回に打者12人で8安打6得点の「速攻」をリード。そのまま高田商を振り切った。

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2点リードの9回2死一、三塁。高田商の打者のバットが空を切った瞬間、智弁学園ナインがマウンドに駆け寄った。人さし指を空に突き上げる仲間の輪に左翼から少し遅れて合流してくる。今夏主に1番で打線をけん引した背番号7の前川だ。満面の笑みのまま目いっぱいその輪に加わった。

決勝まで4試合全て2桁得点、コールドで勝ち上がった。決勝は初回に打者12人で8安打6得点の集中打で流れを握った。リードオフマンの前川は中前打で出て先制のホームを踏むと、この回2打席目では右前適時打を放って6点目をマーク。今大会は14打数9安打の打率6割4分3厘、4打点。通算35発を数える左のスラッガーはノーアーチでも「先頭打者として今大会(ボールの)待ち方を考えてやって成長できた」と手応えを口にした。

1年夏に甲子園で4番を務めた。早くから期待され、その分プレッシャーは大きい。今春のセンバツ準々決勝・明豊(大分)戦では3点を追う8回無死一、二塁で併殺打。試合に敗れて涙を流した。「春は打てなくて迷惑かけた」。責任感を再三口にする前川に「野球を楽しめ」と毎試合前にラインでメッセージをくれたのは2つ上の兄夏輝さんだ。19年夏の甲子園で津田学園(三重)の4番を務め、兄弟4番で注目された。

5月18日の誕生日には打撃手袋と一緒に1冊のノートをもらった。元メジャーリーガーのイチロー氏ら著名人の名言が書かれ、中には「たとえダメな時があっても自分の目標に向けて突き進め」という兄からの言葉も。試合前はバスの中で必ず読んできた。2季連続の出場を決め、「兄が活躍した甲子園で自分も活躍できるように頑張りたい」と恩返しの活躍を誓った。

小坂将商監督(44)は「本当に苦しい試合だった。初回は智弁学園らしくつなぐ攻撃ができた。センバツではベスト8だが全国制覇を目指す」と宣言。集大成として日本で一番長い夏を楽しむ。【岡崎空日南太】