尼崎工の吉村佳太郎記録員(3年)はベンチから身を乗り出し、最後の1球まで仲間を鼓舞した。

6月28日までは副主将を務め、背番号20で選手として出場する予定だった。しかし、八木一真監督や長堂(ちょうどう)智也主将(3年)、マネジャー、チームメートと話し合い、黒瀬公亮選手(2年)を登録することに決まった。「普段の頑張りとか大会での姿を見ていると、黒瀬を入れたいと自分も思いました」と受け止めた。

兵庫県は今夏、全国で唯一記録員を2人まで登録することが可能だ。これまで副主将として声出しに励んできた吉村は監督から記録員になることを提案され、マネジャーの古里海琴(みこと)さん(3年)とともにベンチ入り。家族からは「最後、ユニホーム姿で写真を撮りたかった」と言われたが、それでも「勝つためには仕方ない」と、フォア・ザ・チームに徹した。

チームは12安打を放つも、初戦突破はならなかった。「終わりたくないという気持ちが一番強くて。勝ちたかったです」と声を詰まらせた。

今後は野球を離れ、大学進学を目指す。「ユニホームじゃないけど記録員としてみんなを励まして、ベンチでできることはやりきった。後悔はありません」。チームの勝利を誰よりも願った記録員は最後の夏を終え、胸を張った。