<全国高校野球選手権:佐世保実5-3札幌一>◇11日◇1回戦

 南北海道代表の札幌一は佐世保実(長崎)に敗れ、3年ぶりの初戦突破はならなかった。184センチの本格派右腕・知久将人(3年)が制球に苦しみ、7回裏の押し出しなど9与四球、被安打7で5失点と本来の投球はできなかった。打線は1番斉藤慎次郎三塁手(3年)が7回の左中間ソロ本塁打を含む3安打をマークするなど、相手より2本多い11安打を放ったが届かなかった。

 情けない自分に腹が立った。3-3の7回裏。味方が同点に追いついてくれた直後に、札幌一の知久はまたも四球から崩れ、押し出しの四球を与えた。三塁側ベンチで何度も継投の決断を我慢してきた菊池雄人監督(40)が、悲しそうな表情で交代を告げたのが目に入った。救援マウンドに上がった2年生の横内投手に「頼む。頑張ってくれ」とグラブを差し出すのがやっとだった。

 頼みのエースが与えた押し出しの1点が結果的に決勝点となり、1回戦敗退。甲子園のカクテル光線に、ナインの気落ちした顔が浮き彫りになると、知久は「申し訳ない」という気持ちが涙と一緒にあふれてきた。

 ベンチはマウンドで苦しむ知久を見守るしかなかった。2回の無安打での満塁のピンチは何とかしのいだが、3回につかまった。1死一、二塁から相手4番に左中間二塁打を浴び、先制を許した。右犠飛で2点目を奪われ、この2点が重くのしかかった。4、5回は無四球無失点で切り抜けたが、6回1死から2連続四球後に右前にはじき返された。7回も2四球から、降板への道をたどった。打者33人に対して151球、8奪三振も本来の姿ではなかった。「思い切り腕が振れず、自分の力不足」。試合後、目を赤く染めて唇をかんだ。

 菊池監督は「同点まではいくけど、あと1点。うちに流れを持ってくることができませんでした」と、甲子園1勝の難しさをあらためてかみしめた。チームは昨秋、今春と悔しい道大会準優勝をバネに「つながり」を大切にしてこの夏を勝ち抜いてきた。57人の部員をまとめてきた高石主将は「最高の仲間ともっと長く、もっといい試合をしたかった」と悔しがった。

 それでも、7回途中から救援した横内は死球で1点こそ失ったが(失点は知久)、2安打無失点と踏ん張った。高橋遊撃手、佐藤右翼手ら同じ2年生は、敗戦の中にも新チームにつながる仕事をきっちりやり遂げた。菊池監督は「経験値の少なさが出た。もっとここに来ていろんな経験をすることが必要なんです」。すぐ手が届きそうで届かない勝利への“距離”は、残る1、2年生が縮めていく。【中尾猛】