<全国高校野球選手権:東海大甲府8-4作新学院>◇21日◇準々決勝

 東海大甲府(山梨)が奇襲で8年ぶりの4強入りを決めた。2回1死三塁、カウント1ボール2ストライクからヒットエンドランを仕掛け、遊ゴロで三塁走者が生還。大砲の高橋周平(中日)が抜けた中、硬軟自在の攻めで8点をもぎ取り、昨夏4強の作新学院(栃木)を下した。

 1点リードの2回1死三塁。打席の神原に出されたサインは、スクイズではなかった。「当てる自信はあったし、驚きませんでした」。ヒットエンドラン。しかも1ボール2ストライクと追い込まれていたなかで、外角低めの直球を的確に遊撃前へ転がす。投球と同時にスタートを切っていた三塁走者相原は、難なくホームを陥れた。

 空振り、もしくはライナーなら一瞬にして併殺チェンジの恐れもあった「奇策」だ。三塁走者のスタートが背中に隠れて見えない左腕相手だからこそ採れた作戦でもあった。作新学院の捕手・高山を「初めてやられました」とあぜんとさせたばかりか、その後のリードにも影響を与えた。走者を出すたびに作新バッテリーを疑心暗鬼にさせ、強気のリードを失わせた結果、5回以降に6点を重ねた。

 村中秀人監督(53)は高笑いだ。山梨大会でも「走者三塁でのエンドラン」を2度成功させており「甲子園でもやってみようかなと。当てるのがうまいので、選手を信頼している。スクイズ下手くそなんで」としてやったり。普段の練習から、強いゴロを打てと徹底させている。それが、大舞台での奇襲成功にもつながった。

 4番石井は言う。「今年は周さんがいないので。みんなでつなぐ意識が強いんです」。昨年は中日にドラフト1位で入団した高橋周に好機で回せばよかった。だが現チームに大砲はいない。つないでつないで、全員でかえす。その戦法の1つに、「走者三塁でのエンドラン」があった。そして、8回には石井がダメ押しの1発。大技、小技。巧みな攻撃で、昨夏4強の作新学院を撃破した。

 85年、04年に並ぶ夏3度目の4強入りだ。同校グラウンドには、「全国制覇」と書かれた大きなプレートが掲げてある。「8年前の先輩たちも、ずばぬけた選手がいなかったと聞いている。まずはそれを超えるのが目標」(石井)。山梨県勢初の決勝進出へ、強敵・光星学院と激突する。【鎌田良美】

 ◆山梨県勢の準決勝

 山梨県勢は甲子園の準決勝で春夏通算6連敗中。全国47都道府県で春夏を通じて決勝の経験がないのは山形、山梨、富山、島根、宮崎の5県だが初の決勝進出なるか。