勝負はここからだ。第94回全国高校野球選手権は今日22日、光星学院(青森)が準決勝で東海大甲府(山梨)と対戦する。武田聖貴一塁手(3年)は、ここまで3試合で12打数ノーヒットと不振。この日は仲井宗基監督(42)が見守る中でバットを振り、復調のきっかけをつかんだ。青森大会決勝で勝ち越し2ランを放った勝負強さを発揮し、3季連続の決勝進出に導く。

 1人グラウンドに残った武田が、泥だらけでボールを追った。「行け!

 捕れるぞ!」。練習終了直前のシートノックで、打撃不振に苦しむ仲間をチーム全員が盛り上げる。仲井監督が放った打球を横っ跳びでつかむと、大歓声で迎えられた。「もう、やり切るしかないですね」。吹っ切れたような表情で、大粒の汗をぬぐった。

 甲子園で12打数0安打。しかし復活の手応えはある。この日の打撃練習では、ライナー性の鋭い打球を放った。「最後のほうで、(いい感触を)つかみかけた」。その後も監督が見守る中、重心を軸足に残しながらトスバッティング。入念にフォームを確認した。宿舎でも500スイング。やり残したことはない。

 プロ注目の田村龍弘主将、北條史也遊撃手(ともに3年)の直後の5番という打順に重圧があった。最後の夏が近づくにつれ、結果が出ないときは「自分だけ打てない」と悩んだ。誕生日の6月30日、母雪恵さん(45)からメールが届く。「田村君も北條君も同級生。関係は縦じゃない。横なんだよ」。岩手の母の励ましに応え、青森大会で大活躍。3回戦では延長10回に青森山田を撃破する二塁打。決勝でも、同点の8回に勝ち越し2ランを放った。

 準決勝の相手は東海大甲府に決まった。「今度は右(投手)ですよね?

 詰まっても、ポテンでも、何でもいいから1本打ちたい」。復活を信じて待つ仲間や母に、バットで恩返しする。【鹿野雄太】