<全国高校野球選手権:大阪桐蔭3-0光星学院>◇23日◇決勝

 大旗白河越えの夢は、またもかなわなかった。光星学院(青森)が大阪桐蔭に完封負け。初の春夏連続同一カードとなった決勝で、雪辱はならなかった。プロ注目の相手エース藤浪晋太郎(3年)の前にわずか2安打に終わった。だが、史上初の3季連続準優勝で東北のレベルの高さを証明。深紅の大優勝旗は着実に近づいている。

 壁は高かった。春夏のべ465校の汗と涙が染みこんだグラウンドで、光星学院ナインが3個目の銀メダルを受け取った。「春のリベンジ」を合言葉に臨んだ大阪桐蔭との再戦。しかし、センバツでは12安打を浴びせた藤浪の前に、手も足も出なかった。選手たちは唇をかみ、仲井宗基監督(42)も「完敗です」と肩を落とした。

 昨夏、今春よりも頂点に近づいた夏だった。田村龍弘主将、北條史也遊撃手(ともに3年)が本塁打と打点を量産。準々決勝では、桐光学園(神奈川)のドクターK松井裕樹(2年)を粉砕した。3季連続で決勝まで上り詰め、全国トップクラスとなった強力打線を作り上げたのは「日本一のエッセンス」だった。

 きっかけは2年前。春季東北大会で木村謙吾投手(現楽天)擁する仙台育英(宮城)に屈辱の17三振を喫した。「打てないと勝てない」とチームは痛感。同時期に大学選手権を見ていた金沢成奉総監督(45)が、大学トップクラスに君臨する早大の練習法を持ち帰った。今や他校も多く取り入れる「13メートルの近距離バッティング」。これを直後から実践。プロからヒントを得た打撃理論も加え、田村や北條を中心にチーム全体が進化を遂げていった。

 大会に入っても選手は「毎日500スイングしている」と口をそろえる。激闘の直後も欠かさない練習は、強打の日大三(西東京)を参考にしたもの。そして本塁打を放っても選手が笑わないのは、10年に興南(沖縄)で春夏連覇を達成した、当時の我喜屋優監督(62)の指導法を取り入れた。

 今月限りで光星学院を離れる金沢総監督は言った。「レフトが雑草だらけだったチームが、17年かけてここまで来た」。就任した95年から仲井監督と二人三脚で苦労を重ね、3季連続準Vという胸を張れる結果を残した。その中心となった田村は「青森のレベルは確実に上がっている。後輩に経験を伝えて、(頂点まで)勝ち上がってほしい」。これは大阪出身者ばかりの力ではない。松井に投げ勝ち、藤浪とも互角に戦った金沢湧紀投手(3年)は、地元八戸出身で初めてエースナンバーをつかんだ。そして、金沢総監督が発足に携わった「八戸東シニア」の1期生が、現1年生に2人いる。史上最強と言われた世代の夏は終わっても、光星学院の挑戦は続く。【鹿野雄太】