<高校野球北大阪大会:大阪桐蔭2-0履正社>◇26日◇決勝

 中田さん、甲子園です!

 大阪桐蔭が2年ぶり5回目の出場を決めた。前年のエース中田翔(当時3年=日本ハム)から背番号1を受け継いだ福島由登(3年)が6安打完封。4番の萩原圭悟(3年)が2打点を挙げ、昨夏大阪大会決勝で敗れた先輩の思いをつないだ。

 1年前の決勝は悔し涙にくれたナインが、1年後はうれし涙をこぼした。9回、浅村栄斗(ひでと)遊撃手(3年)はゲームセットを待ちきれずに泣いていた。チーム屈指の名手が、2死から一塁に悪送球。「目がかすんで見えなかったんです」。浅村の思いは、昨夏を知るナイン全員の思い。最後の打球は、二塁の森川真雄主将(3年)がきっちりと一塁に送った。福島由がようやく笑った。エースは完封で最後を締めた。

 初回無死二塁で相手2番の犠打を投飛にし、1死一、三塁では4番打者を一直併殺。絶妙の制球で相手の強打を封じ、萩原がくれた2点を守り抜いた。「ここまで来て負けるわけにはいかないと必死で投げました」。声が弾んだ。

 下級生のころ、福島由は中田の快速球がうらやましくてならなかった。「どうやったら速球を投げられるんですか?」。中田に何度も聞いた。「お前の持ち味はコントロールやろ」と、中田は教えてくれた。中田らの打撃投手を務めるうちに制球の大事さを理解し、特徴を伸ばした。その結果がこの日の完封だった。

 福島由もベンチ入りしていた昨年の大阪大会決勝。金光大阪に惜敗し、泣きじゃくる中田を見ながら、2年生もぼうぜんとしていた。中田らがいるだけで、甲子園に簡単に手が届くと思っていた。慢心に負けたとわかっても切り替えられず、昨秋の大阪府予選準々決勝でPL学園にコールド負け。ようやく目が覚めた。

 打開策を話し合った。全力疾走、声をかけ合う、粘り強い野球で団結すると、結論を出した。春から結果が出始めた。大阪で1位になり、近畿大会も準優勝。東洋大姫路(兵庫)や常葉学園菊川(静岡)など強豪との練習試合にも勝ち、自信を取り戻して行った。「やんちゃな兄ちゃんらの陰で一生懸命努力した学年。どうしても一緒に甲子園に行きたかった」。西谷浩一監督(38)の声も詰まった。【堀まどか】