アレックス・ラミレス監督(43)率いるDeNAはあと1歩及ばなかった。3連敗の後、2連勝して迎えた「SMBC日本シリーズ2017」第6戦。9回に守護神・山崎康が本塁打を浴びて延長に突入し、11回に力尽きたが、シリーズ初先発出場の指名打者・白崎浩之内野手(27)が5回に同点本塁打を放つなど、圧倒的優位とみられていたソフトバンクを苦しめた。

 いつも、どんなときでも前を向いていたラミレス監督が、目を背けた。幕切れの瞬間、ベンチで後ろを向いた。サヨナラ負けの現実を受け入れられなかった。受け入れたくなかった。奇跡の日本一を、誰よりも信じていたのは、言うまでもなくラミレス監督だった。

 3位からCSを勝ち抜いた下克上での日本シリーズ。最終決戦は延長11回4時間22分の激闘の末、敗れた。幕切れから1時間後、口を開く。「選手には素晴らしい1年だったと伝えた。こういう形で負けはしたが、これは負けではない。得るものがあった1年だった」。いつものラミちゃんに戻っていた。

 限られた時間の中で、最強の敵・ソフトバンクの弱点を探した。「これは僕にとってチャレンジ。弱点を見つけようにも見当たらない。分析しがいがある。完璧だから倒しがいがある」。日本シリーズ5試合を材料に、いつもの倍の時間をかけて徹底的に分析した。今季わずか先発10試合で、今シリーズは1打席のみだった白崎を指名打者に抜てき。ズバリ的中し、5回に同点弾。「僕の得意な意表を突く決断だった」。試合前練習で見極め、決断は試合直前だった。

 1点にかける執念をむき出しに采配を振った。ビハインドで食らいつき、倒れかけている相手にはたたみかけて沈ませる。僅差の戦いは、敵地に場所を移しても、負けず劣らず死闘へ持ち込んだ。「何かが足りなかったというより、ベストを尽くして勝てなかった。ソフトバンクが強かったということ。ベストの決断をし、選手はベストの戦いをしてくれた。下を向く必要はない」と、胸を張る。

 CS初戦から22日間14試合。移動距離約5000キロ。驚きと感動を呼んだ足跡は確かに刻まれた。来季は就任3年目。20年ぶりの頂点へ、ラミちゃんは再び前を向く。【栗田成芳】