リーグ8連覇を達成した富士大(岩手、北東北)の4年生は、入学から1度も優勝を逃さなかった黄金世代だ。そのうちの16人が、卒業後も社会人チームや硬式クラブチームで野球を継続する。最終学年からエースを任された加藤弦投手(八重山商工)はJR東日本東北(宮城)に内定し、チームを3年ぶりの都市対抗出場に導く。主将の小林遼捕手(仙台育英)はJX-ENEOS(神奈川)、4番の三浦智聡内野手(盛岡大付)は西濃運輸(岐阜)に内定。2年後に3人同時のプロ入りを目指す。

 兵庫出身の加藤は東北の地に残って、都市対抗出場をステップにプロ入りを目指す。高校は沖縄・八重山商工に野球留学。大学は一転して投手育成に定評がある岩手・富士大を選び、今度は宮城のJR東日本東北に進む。「大学での3年間はけがをしてて、ほぼ結果を残していなかったけど、最初に誘ってくれたところに決めた」。最終学年でエースに上り詰めた。先発左腕の鈴木翔天(そら、3年=向上)から託される必勝リレーを完成させ、リーグ8連覇に貢献した。

 三振を奪う度にほえまくり、闘志を前面に押し出すスタイルだ。「自分にすごい球がないので、常に気持ちで勝負しないと。気持ちで負けたら負け。1球1球気持ちを込めて投げられれば」。大学の先輩、西武多和田や阪神小野ほどの剛速球はないが、最速144キロの直球とカーブ、スライダーをコースに投げ込み、要所を抑える。

 西武にドラフト5位で指名された岐阜経大の右下手投げ、与座海人(4年=沖縄尚学)は高校で同世代だ。「沖縄で一緒で同い年だけど、高校の時は3番手投手。タイミングもあったりして、誰がプロに行くか分からない」。当然、都市対抗と日本選手権の出場が最大のアピールとなる。「都市対抗に出ることが、自分の結果にもつながると思うし、日本選手権でも投げてみたい。京セラドームは地元みたいなものなので」。全国を股に掛ける加藤が宮城を安住の地とせず、プロの門をたたいてみせる。【取材・構成=高橋洋平】