初ものでクライマックスシリーズ(CS)の初陣を制した。巨人岡本和真内野手(22)が、プロ入り初の犠飛で先制。レギュラーシーズンで歴代最年少を更新する22歳シーズンでの「3割30本100打点」を達成した若き主砲の打点で試合を動かした。1点リードの5回2死二塁のピンチで登板した上原浩治投手(43)が、今季初のイニングまたぎでパーフェクト救援。日本では08年以来のポストシーズンで、今季初の勝利を挙げた。

やっぱり、ファーストスイングがうまかった。1回1死二、三塁。岡本がヤクルト小川に食らいついた。自身初のCS、第1打席の初球。見送ってもおかしくない外角高めの143キロカットボールに、思い切りバットを伸ばした。下っ面をたたいた打球はタッチアップに十分な飛距離。「何とかバットに当てようと思った。うまく飛んでくれて良かったです」と三塁走者田中俊を悠々と生還させる先制の犠飛を放った。

詰まりかけた流れを、スッキリとおさめた。犠飛の直前、マギーの大飛球に二塁走者田中俊が惑った。右翼手の頭上をギリギリ越えたため、二、三塁間からは捕球したようにも見えた。そのため三塁進塁にとどめられた。手放しそうになった絶好の先制機を、若き主砲が1球で取り返した。「割と初回にチャンスが回ってきてたので、良かったです」とシーズンで培った勝負強さを発揮。意外にも犠飛はプロで初めて。100打点を記録した今季でも1本もなかった。

打席を離れれば、22歳の素顔が垣間見える。9月23日、甲子園での阪神戦後。宿舎の食事会場でビールを1杯だけ飲んだ。右手に死球を受け24打席ぶりにヒット。呪縛から解放され、ひっそりと、ささやかな祝杯を挙げた。「今季はずっと飲んでなかったんですが、久しぶりに飲んだ。1口目は今までにないぐらい、おいしかった。でも最後は苦かった」。ご褒美のつもりだったが、苦味にちょっぴり当てられ、飲み干した。プロの世界は甘くない。苦しんだ先に至福がある。自身を戒めた。

ファーストステージ突破へ王手をかけ、クラブハウスへと引き揚げると仲間から出迎えられた。輪に飛び込もうとした瞬間に「サイレント・トリートメント」を食らい「なんでやねん」と笑顔を振りまいた。愛される若き主砲。「もうしばらくは飲まなくていい」と決めた苦い美酒は、日本一のビールかけまで取っておく。【島根純】

▼22歳3カ月の4番岡本が先制犠飛。日本シリーズでは高卒1年目の86年清原(西武)が4番を打っているが、プレーオフ、CSでは13年1S第1戦浅村(西武)の22歳11カ月を抜く最年少4番。