【ホノルル(米ハワイ州)11日(日本時間12日)=桝井聡】阪神西勇輝投手(29)がエースの覚悟を明かした。同地で自主トレを公開。FA移籍2年目も先発ローテーションの柱として期待される右腕は、プロ12年目で初めて「エース」という言葉を口にして気概を示した。阪神の15年ぶりリーグVに向けて中心としてフル回転すると宣言。走り切った先にある優勝旅行で常夏の島に帰ってくる。

     ◇     ◇     ◇

ハワイの気温より西勇の言葉は熱かった。今季に懸ける思いを問われたときだ。真っ黒に日焼けした右腕は「やっぱりエースとして、確立したポジションで、全員を背中で引っ張れるピッチャーになること」と、目をギラリと輝かせた。オリックス時代には5度の2桁勝利。阪神でも昨季10勝を挙げるなど、チームの柱であり続ける男が初めて「エース」というフレーズを口にした。FA移籍1年目の昨季とは、明らかに違う思いがある。

「去年はメッセって最初に言われていたけど、今年は誰もいない。態度、後ろ姿、立ち居振る舞い。それを見せていかないといけないと感じるし、言われている。すごく大事な(プロ)12年目になると思う」

チーム状況も変化した。5年連続で開幕投手を務めたメッセンジャーが現役を引退。成績だけを見ても昨季、規定投球回に達した先発は西勇と青柳の2人だけだ。期待された若手の伸び悩みもあって計算できる先発はわずか。誰かが引っ張らないとチームが成り立たない…。言葉には危機感さえにじむ。

歓喜の瞬間を頭に思い浮かべる。すべては自身初、チームでは15年ぶりとなる優勝のためだ。「誰もができるわけじゃない。すごく憧れの場所。中心でいるときにやっぱり優勝したい。自分が軸でいるときに優勝したい」。いつかは…ではない。明確にイメージして、目標を掲げることを説く矢野監督と同じ思考だ。西勇にとってそれが、エースとして今季絶対に優勝するという強い気持ちだ。

エースとしての虎2年目へ準備は着々と進んでいる。今回から単独で実施しているハワイ自主トレでは、瞬発系のトレーニングを重点的に体をいじめる。ブルペンでもすでに立ち投げを開始。この日はあいにくの雨だったが、入念に体を動かした。「阪神も優勝旅行はハワイ? みんなで来たいね。投手を連れて行きたいなぁ。どこかおいしいごはん屋さん」。激闘を終えた次の冬には慣れ親しんだ常夏ハワイに、チームみんなで帰ってくる。