助っ人右腕が日本に感銘を受けた。広島テイラー・スコット投手(27)が21日、マツダスタジアムのブルペンで29球を投げた。先行きが見えない状況でも、定期的にブルペン入りしてコンディション維持に努める。

来日1年目に、まさかのコロナ禍で開幕が大きく遅れている。それでも目の当たりにした日本人の姿勢に共鳴。夫人のサポートを受けながら、地に足をつけて調整を続けている。

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新天地での開幕は、まだ見えない。それでもスコットは足元を見つめ調整を続ける。1勤1休となっても、ブルペン投球は継続。この日は29球を投げた。「今日は非常に良かった。かなり感覚良く投げられました」と投球内容に手応え十分だった。

春季キャンプ、オープン戦と結果を残し、予定通り開幕していれば抑えを務めていた。だが開幕は遅れ、先が見えない調整期間に入った。「開幕が分からないので(練習強度を)下げています。開幕日が決まれば、一気に上げられるイメージでトレーニングしています」。1度は勝ち抜いたチーム内競争の再開に向けて、調整をリセットした。

来日1年目で味わう厳しい状況下で、日本人の特長を目の当たりにした。「礼儀が正しく、統率が取れている。禁止されていなくても、“自粛”ということで外出を控えたり、店を休業させたりと周りを考えられる印象を受ける」。渡航規制がかかる直前に米国から来日したチェルシー夫人との時間も、人けのない道の散歩や買い物へ出かける程度に自粛している。「彼女の存在があることで今の状況を乗り越えられる。僕自身も彼女をしっかりサポートして新しい国でいろいろな経験をしたい」。何よりの支えである夫人とともに日本になじもうとしている。

日本人の姿勢は野球に対しても同じ。長引く調整にも、練習日は目的意識を持って取り組む。「状況は厳しいですが、カープの選手は球場に来て、練習をして、体を動かして、汗をかいて、ブルペンで投げることもできます。そういう部分は恵まれていると感じています。この有意義な時間をしっかり使って調整したい」。言葉も違う。食事も違う。文化も違う。異国の地での挑戦は前途多難。それでも早くも身につけた「日本式」で、いつか来る開幕に合わせていく。【前原淳】