「日産」を冠した社会人野球チームが新たに誕生する。

茨城県内で新車・中古車の販売や福祉事業などを手がける茨城日産グループは23日、水戸市内で会見を開き、硬式野球部の発足を発表した。既に日本野球連盟(JABA)に登録申請中で、年明けにも認められる見込み。21年度の都市対抗野球大会予選からの参加を目指す。

監督には、日産自動車野球部で長年ヘッドコーチを務めた渡辺等氏(56)が就任する。

今治西(愛媛)で投手、外野手として81年夏の甲子園出場。日産自動車では、94年に三塁手として社会人ベストナインに選ばれた。「まずは守りのチームをつくりたい。経験上、攻撃を重視すると勢いはつくが、守り中心で、いかに力を合わせるかでピンチでも結束が固まる」と構想を掲げた。将来的な目標は、もちろん都市対抗本戦出場だ。「日立製作所と日本製鉄鹿島の壁は厚いが、1年でも早く、社長、会長に東京ドームで見ていただけるように」と、同席した茨城日産の加藤啓進会長、加藤敏彦社長に誓った。

部員は、来春入社予定が新卒23人(大卒21人、高卒2人)。東京6大学野球出身者や、甲子園経験者も含まれている。既に入社している2人と選手兼任コーチ2人もいる。活動場所は、水戸市民球場などを予定。投球2カ所、打撃2カ所、ウエート設備を備えた室内練習場も準備する。

部員は社業にも従事する。平日のチーム練習は週1回、午前中に集中して行い、後は休日を利用する。鈴木雅道野球部長(69)は「野球と仕事を両立するのが、本来の社会人野球」と話した。

かつては「日産」を冠した社会人野球チームが複数あった。今回、久しぶりに「日産」のチームが誕生することで、10年から休部中の日産自動車野球部OBからは歓迎の声が上がっている。

茨城日産は日産本社とは別資本であり、茨城日産発足が日産自動車の活動再開につながるものではない。それでも、社会人野球ファンの間では日産の活動再開を望む声は根強い。毎年オフには、OBによる野球教室も開かれている。

◆過去の「日産」 かつては日産サニー札幌、日産ディーゼル、日産車体京都、日産自動車九州といったチームが存在した。日産サニー札幌からは78年ドラフト3位で有沢賢持投手がヤクルト入り。日産ディーゼルは巨人大塚淳弘投手(現球団副代表)を輩出。日産自動車九州には00年に肺がんのため31歳で死去した藤井将雄投手(ダイエー)、七條祐樹投手(ヤクルト)らが在籍していた。