ポスティングシステムを申請し、メジャー移籍を目指した巨人菅野智之投手(31)が8日、残留を決めた。複数のメジャー球団と交渉し、日本時間8日午前7時の交渉期限直前まで熟考を重ねた中で決断。夢であるメジャー移籍へと心は揺れ動いたが、巨人のエースとしての矜持から信念は曲げず、1年契約で巨人で勝負する意向を固めた。東京五輪での金メダル、リーグ3連覇と初の日本一を目標に設定。今季中に海外FA権を取得する見込みで、シーズン後に再び夢への挑戦を自らの心に問い掛ける。

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交渉期限の午前7時まで熟考し、菅野が巨人残留を決断した。交渉に際し、持ち続けたのは巨人のエースの矜持だった。プロ8年間で沢村賞、最多勝、最高勝率、最優秀防御率、最多奪三振を獲得。現地報道ではパドレス、ブルージェイズとの交渉で、菅野側が一定の金額を設定したとされたが、自身の思いだけでなく、今後メジャーを目指す選手の交渉への影響も考えた判断だったとみられる。

菅野は、メジャーへの移籍を以前からの「夢」と表現した。オフに入って、移籍市場の目玉とされるメジャーリーガーの規格外の契約情報が報道される中、本音を漏らした。「純粋にすごいなと思いますし、夢があるなとも思いますよ。でも、お金だけじゃないんですよね。僕にとって、メジャーのマウンドに立つということは」。

本意とは違った情報が独り歩きした。一部の米メディアは、菊池雄星が移籍時にマリナーズから保証された4年総額5600万ドル(約58億8000万円)と同等の条件を求めたと報道した。代理人から各球団へのけん制の可能性も考えられるが、菅野が求めた優先する条件の1つは、優勝を本気で目指せるチームだった。

米メディアによればブルージェイズ、パドレス、ジャイアンツ、メッツ、レッドソックス、エンゼルス、レンジャーズなど複数球団が調査した。複数の米メディアが、最終交渉に臨んだ球団をパドレスと報道。今オフに大型補強を敢行中のパ軍に対して菅野側が求めた条件は菊池と同等より低かったとみられるが、合意には至らなかった。

期限終了直後、日刊スポーツの取材に応じた菅野は「交渉を重ねていった結果、挑戦するタイミングは今ではないと自分自身判断しました。しかし、この期間で経験したことは今後の人生において、かけがえのない財産になったと確信しています」と語った。

米メディアの報道では、巨人とは4年契約との情報が飛び交ったが、1年1年が勝負のポリシーを貫き、1年契約の意向。「夢を後押ししていただいた、読売巨人軍には感謝の気持ちでいっぱいです」とポスティング申請を認め、決断を待ってくれた球団に恩義を感じながら、退路を断ち、勝負をかける。

今季の目標を東京五輪での金メダル、リーグ3連覇と自身初の日本一に定めた。「全力で原監督、チームメートとともに日本一奪還を目指します。その先にまだ自分にチャンスがあるのであれば、考えていこうと思っています」。今季中に海外FA権を取得する見込みで、再び挑戦を決断する可能性がある。夢に終わりがないことをマウンドで体現する。【久保賢吾】

◆菅野の開幕投手 14~16、18~20年の通算6度登板して4勝2敗。菅野が今年も開幕投手を務めると、巨人では上原浩治(00~06年)の7度に並ぶ最多タイ。5勝目を挙げれば、別所毅彦(4勝0敗)斎藤雅樹(4勝1敗)を上回って球団最多勝利になる。