【シカゴ(米イリノイ州)14日(日本時間15日)=飯島智則、広瀬雷太】ヤンキース松井秀喜外野手(29)が一振りにすべてをかける。初出場のオールスター戦に「7番センター」で先発出場が決定。「1番ライト」のマリナーズ・イチロー外野手(29)と違い、打席は1度しかない可能性が高い。初々しさを漂わせながらも、本塁打への意欲を語った。

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松井は額に汗をかきながら、球宴アーチを誓った。「狙って打てるに越したことはない。頑張ります」。開催地シカゴは70年前の第1回オールスター戦でベーブ・ルースが第1号を放った場所。「それは聞いたことがあります。僕も打てたらいいですね」。照れ笑いを浮かべながら日米の報道陣に答える松井のスーツ姿は、初々しかった。

年に1度のお祭りもラフなスタイルで臨むのがメジャー流。会見場に到着した松井は、Tシャツばかりの周囲を見渡してすぐにネクタイを外そうとした。しかし、同行したヤ軍の広岡広報から声がかかった。「新人なんだからいいじゃないか」。松井も納得した。「逆よりはいいよね」。蒸し暑さに上着を脱いだ。シャツの腕もまくった。それでも最後までネクタイは外さず45分間の会見を終えた。

その後、球場に移動して行われた本塁打競争では、カージナルスの主砲プホルスの打撃に目を奪われた。チームメートのジアンビと対戦した準決勝で24スイング中14本をスタンドにたたき込んだ技術とパワーに「とにかくすごい。飛距離もあるし、逆方向へ打つこともできる。だれもがああいう打撃を目指していると思う」。前半戦9本塁打に終わり「後半戦は何とか」と意気込む松井にとって、大きな刺激にもなった。

チャンスは多くない。この日発表された打順は7番。1番で先発するイチローとは違う。他の選手との兼ね合いもあり、下位打線の松井は1打席で交代を命じられる可能性もある。「(ナ・リーグ先発シュミットの)速い球に負けないようにしたい」。狙いは直球一本。新人らしく、思い切りよく、潔く。スタンドめがけてフルスイングするつもりだ。

○…松井がイチローとの「合同トレ」で本番に備えた。USセルラー・フィールドで行われた練習は、イチローとのキャッチボールで始まり、他の選手の打撃練習中は一緒にセンターの守備について談笑。フリー打撃ではイチローと同じ8本のさく越えを放った。終始リラックスしたムードで準備を整えた松井は「イチローさんが『一緒にやろうか』という感じで声をかけてくれた」と先輩の心遣いに感謝していた。