「むつの剛腕」が大きな1歩を踏み出した。最速149キロ右腕の八戸工大一(青森)黒田将矢投手(3年)が、西武から5位指名を受けた。同校から直接プロ入りしたケースは、16年ドラフト6位のロッテ種市篤暉投手(23)以来2人目。将来性豊かな剛腕が、夢見た舞台で花を咲かせる。

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ドラフト会議開始から1時間37分後、黒田が目を細めた。指名直後は長谷川菊雄監督(44)と握手をかわし「続々と指名される中で、自分の名前が呼ばれてうれしかった」。同会議は長谷川監督も最初から臨む予定だったが、弘前市で開催中の秋の青森大会準決勝を終えて移動。午後6時28分に会見場に到着し、イスに座る際には黒田の肩に優しく手を添えた。「2年半も監督と野球をやってきて、いつも支えてくれた恩師の先生が来てくれて、すごく安心した」と黒田。数分後に念願の瞬間が訪れた。

急成長を遂げたのは、悔しさが原動力だった。2年秋は八戸西に県大会準々決勝で敗退。オフは約4キロの長距離走や短距離ダッシュの反復練習などで下半身を強化し、最速は同秋までの142キロから7キロも更新した。また、並行してフォークの精度向上にも着手。投球を支えたスライダーに加え、「自分の中ではすごく手応えのある2球種」と自信を持った。最終学年はエースとして春に県準優勝、夏は県4強に導いた。

先輩後輩対決も心待ちにする。同校OB右腕のロッテ種市とは同じパ・リーグ。「種市選手に憧れて自分は入学してきた。投げ合えたら光栄なことなので、とても楽しみな気持ち」と高揚した。将来的な目標は「先発ローテーションに入って毎年2桁勝利ができる、チームを代表できるような投手になれるように頑張りたい」。青森から埼玉へ。「むつの剛腕」が、新天地でさらなる成長を遂げてみせる。【相沢孔志】