オリックスのラオウこと杉本裕太郎外野手(30)が渾身(こんしん)の一撃をぶっ飛ばした。0-0で迎えた4回無死一、二塁。日本ハム立野の初球135キロフォークをとらえた。豪快なスイングに白球を乗せ、左翼席上段に32号先制3ラン。左手で握ったバットを高々と上げ、確信歩きだ。

「感触も完璧。今年1番の当たりでした!」

“今季一”を、大事な場面で持ってきた。13、14日のロッテ戦(京セラドーム大阪)で連敗し、マジック点灯を許したばかり。自力優勝の可能性は消滅したが、まだまだ諦めない。

ゆったりとダイヤモンドを回ると、お決まりとなった「昇天ポーズ」を一塁側ベンチ前で披露。この日は右拳を突き上げるのを約3秒間、我慢した。本塁打を放った打席と同じく「タメ」を作り、札幌ドームの右翼席に集ったファンと呼吸を“今季一”合わせた。

一緒に喜びを分かち合う。「せっかく『ラオウ』って、みんなが呼んでくれている。みんなで喜べるようなことがしたい」。打席では孤独との闘い。豪快な打撃に温厚な人柄でファンを魅了し、歓喜を共有している。4月8日ロッテ戦(ZOZOマリン)。右翼席に弾丸ライナーの今季1号を放った杉本は、1人で恥ずかしげに右拳を突き上げた。「あのポーズ、はやらしたいけん、みんなに広めてくれん? もっともっと打てるように頑張るけん!」。徳島出身の30歳。青学大、JR西日本、オリックスと経由しても、抜けない阿波弁で昇天ポーズの浸透に力を入れた。

半年前の約束を守り、32発目。本塁打数トップを走り、キングも視界に入る。「大事な場面で打つホームランは気持ちいい。また打ちたいって思えるけん、頑張れる」。昨年8月、中嶋監督が代行就任時に、「一緒に1軍に行くぞ」と大阪・舞洲の風呂場から連れ出された男が、堂々と4番に座っている。【真柴健】

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