新たに就任した阪神藤井康雄1、2軍巡回打撃コーチ(59)が20日、甲子園の秋季練習で初指導した。「シンプルに、人間の摂理じゃないけども、普通に自然に動くとこうなるでしょ、っていうことをやっただけ」。体の使い方を4つのタイプに分類する「4スタンス理論」に基づく指導で、矢野監督と身ぶり手ぶりで語り合い、選手の動きをじっと見つめた。

個別練習中に助言を受けた中野拓夢内野手(25)は、力の入れ方から「A1タイプ」に分類された。「A1でイチローさんだったり、そういうタイプと似てると言われた。似た選手のバッティングも参考にしながら、今しか取り組めないことでもあるのでレベルアップできたら」。今季は新人ながら2番に定着し、打率2割7分3厘をマーク。イチロー型のヒットマンとの期待に刺激を受け「もう少し細かい身体の使い方を覚えることで遠くに飛ぶかもしれませんし、バッティングが向上するかもしれない」と決意を新たにした。

藤井コーチは全体的な野手のスイングについて「(体に)制限をかけている」と分析。「自分が思っている動きができないのは、伸びしろがめちゃめちゃある」と眠っている潜在能力を引き出す意気込みだ。矢野監督も「今日話を聞いてもすごくおもしろかったし、選手にとっては発見が多いんちゃうかな」と期待。22日の第4クールからは、各選手のタイプを詳しくチェックしていく予定で、新たな気づきが飛躍のきっかけになりそうだ。【磯綾乃】

◆4スタンス理論 人にはそれぞれ骨格や運動のメカニズムがあり、それぞれに合った体の使い方がある、という理論。バランスの重心となる足裏のポイントによってA1、A2、B1、B2の4つに分類する。ゴルフスイングの分析に用いられて話題になった。近年では20年ロッテの新人合同自主トレで、提唱者の広戸聡一氏の講義を受けた佐々木朗が、エンゼルス大谷、楽天田中将と同じ「B2」に分類された。

○…藤井コーチはこの日、佐藤輝を指導する場面はなかったが、ティーやフリー打撃を見守った。「本来のものはまだ出せてないってことかな」と、初めて間近で見た怪物スラッガーの印象を明かした。入団会見の際には映像などから、ソフトバンク柳田タイプと分析。「今日は見てるだけだったんで、次回もう1回そういう話をしようかなって思っています」。コミュニケーションを取りながら、復活をアシストする。

○…藤井コーチの指導を受けた選手たちは、目からうろこだった。小幡は今季、4スタンス理論の本を買っていたという。「小さいことを意識するだけで、こんな力強さが変わるんだって。納得した感じはありました」。板山は自身が課題に感じていた部分をぴたりと指摘された。「どうすれば滑らずに、かんだ打球がいくのか試行錯誤しながらやっていました。その中で1つのやり方、そういう動きがもうちょっとあった方がいいんじゃないと言っていただいた」。陽川も「新しい発想というか、そういうのができた。この期間しかできないことだと思うので、頭に入れながらやっていきたい」と意気込んでいた。

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