大船渡市の野球少年、千葉恭佑君(12)はびっくり仰天した。「黄金の国いわて・大船渡ナイター」として開催されたロッテ-中日戦。始球式だけでも緊張したのに、打席にあこがれの人がやってきた。

「最初は誰が来てくれるか分からなくて。朗希君がいたので、うわっ、朗希君だとビックリしました」

所属する猪川野球クラブの大先輩、佐々木朗希投手(20)と18・44メートルで向かい合った。普段は背番号10。この日用に「17番」をつけた。今、チームはグレーのユニホーム。市内に眠っていた“朗希時代”のユニホームで投げた。「すごくフワフワして」。あこがれの人が完全試合を達成したマウンドから入魂の1球。「全力を出し切れて、ストライクをとれたので満足です」。一緒に写真に納まった。「こんなにデカいんだな~」。40センチ以上デカい朗希君の笑顔を見上げた。仲間18人で寄せ書きをしたユニホームは先輩に渡した。

猪川野球クラブの6年生だった佐々木朗希少年も同じマウンドで投げた。13年12月。震災で被災した野球少年たちを応援する大会「リアスリーグ」の決勝戦で、QVCマリンフィールド(当時)を訪れ「2番遊撃」で出場。優勝した後の親善試合では投手も務めた。何の巡り合わせか、千葉君も遊撃手兼投手。この日で朗希少年が投げた日から、ちょうど8年半が過ぎた。

「一生忘れない、心に残る思い出です」

役目を終え、スタンドへ下がる。照れくさそうな恭佑少年が1歩進むたび、ロッテファンから温かく大きな拍手が注がれ続ける。興奮さめやらない彼が8年半後、マリンで躍動していたら…。この上ない物語だ。【金子真仁】