ビールいかがですか-。楽天モバイルパーク宮城での野球観戦を華やかに彩る売り子。今年の“顔”と言える存在が、なっちゃんだ。
1試合で331杯販売というサッポロビールの球場記録を持ち、昨年の売り上げ総杯数は2位。今年は前半戦終了時点のNO・1で、初の年間女王を射程圏内に捉える。なっちゃんに加え、100人を超える売り子をサポートするトレーナーの早坂菜々子さんに話を聞いた。【取材・構成=山田愛斗】
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なっちゃんにとって運命の出会いだった。小学生の頃に家族で楽天戦を観戦。その際に大好きだった嶋基宏捕手(現ヤクルト・ヘッド兼バッテリーコーチ)と同じぐらい輝く存在を見つけた。「売り子さんのキラキラした姿がずっと印象に残っていて『自分もやりたい』って小さいながらに憧れを抱いたんです」。大学に進学すると売り子のアルバイトを始め、年間売り上げ総杯数は昨年が2位。今年は現時点のトップで年間女王も射程圏内だ。
華やかな印象が強い売り子だが、心身ともにタフさが求められる。日々、売り上げ杯数で順位付けされる世界。ビールだるなど約15キロの装備を背負いながら階段を上り下りして体力面での負担も大きい。それでも「辞めたいなと思ったことはないですね。(1試合ごと、月間など)1位をとっちゃうと、もうずっと自分が1位でいたいっていう気持ちが生まれますし、意地でも守り抜く気持ちでやってます」と負けず嫌いな一面をのぞかせる。
なっちゃんが1試合で販売した自己ベストは331杯。これは球団創設以降、サッポロビールの最高記録だという。球団で飲食を担当する柴田麻美さんは「100杯が1日頑張ったねという数字で、ものすごく売ったねと言われるのが200杯です」と説明。なっちゃんは「まずは350杯いけたらうれしいですし、夢があるなと思うのは400杯ですね」と、さらなる高みを見据える。
ホーム戦は全試合で出勤。お客さんからの「頑張ってね」「元気をもらえる」などの言葉が頑張る原動力だ。「多くの方に球場で楽しんでもらいたいですし、『売り子さんも良かったな』とすてきな思い出の一部になれたらうれしいですね」。楽天モバイルパーク宮城の“顔”としてキラキラと輝き続ける。
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トレーナーの早坂さんは「基地」と呼ばれるバックヤードで100人以上いる売り子を司令塔として支える。ビールだるの交換、スタッフの勤務時間管理やメンタルケアなど業務は多岐にわたる。「もともとは売り子をやっていたんですけど、裏方の仕事をお手伝いする機会があって、『こっちの方が自分に合ってるかも』と、やりがいを感じて始めました」と転身した。
メンタルケアは欠かせない仕事だ。売り上げが振るわず、落ち込んだ状態でバックヤードに帰ってくる売り子もいるという。「私の売り子時代は中堅層で『自分なんかダメだ』と何度もへこみました。そんな時にトレーナーがすぐに励ましてくださって、助けられました」。その経験があるからこそ「どうやったら売れるかを教えるというよりかは『一緒に頑張ろう』『売り子って楽しいんだよ』と伝えたいなって」。前向きな気持ちになれるような声かけを大切にしている。
大学4年の早坂さんは就職に伴い、今季限りでトレーナーを卒業する見込みだ。「基地の良さをつないでいってほしいなという思いがあるので、この短い期間でどれだけトレーナーの後輩、売り子の中堅層を育てられるかに重点を置いて頑張っていきたいですね」と後進の育成に全力を注ぐ。
○…12日の西武戦では「売子Night」が開催された。売り子が主役の1日としてスタンドでドリンクを販売する傍ら、試合前のステージイベントやイニング間にも登場。試合終了後には来場者をお見送りするなど大忙しだった。ドリンク購入者には特製売り子カードがプレゼントされた。売り子をフィーチャーした企画は珍しく、なっちゃんは「本当にありがたいですし、うれしいですね」と笑顔で話した。



