なぜ得点圏で打てるのか? 素朴な疑問をぶつけると、阪神4番の大山悠輔は「いや~なんでなんですかね…」と苦笑いした。
熱心な虎党ならご存じの方も多いだろう。現在、虎のドラフト1位カルテットが得点圏打率の上位を独占している。中でもリーグトップの大山は3割6分3厘のハイアベレージ。本人も明確な理由は分からないというが、どうやら心構えにヒントがありそうだ。
「チャンスで打席に入る時…今は『よしっ!』という気持ちと『怖さ』と半々ぐらいですかね」
主砲は本音を吐露した後、静かにうなずいた。
実は大山の得点圏打率は例年高い。初めて全143試合に出場した19年は3割1分8厘。20年、22年、23年の3年間も2割9分5厘、3割7厘、2割9分4厘でシーズン打率を上回っている。一方で21年だけ2割5厘と停滞。翌22年春のキャンプ中にはメンタルコントロールの重要性を自身に言い聞かせていた。
「『うわっチャンスだ』じゃなくて『ここで打ったらヒーローになれる』と考えられるように、引き出しを増やしたい」
そんな言葉から2年半が経過。好機での引き出しは確実に増えている。長打や安打はもちろん、状況に応じて犠飛や内野ゴロといった「最低ライン」も意識。てっきり今では「よしっ!」の感情が大半を占めているだろうと想像していたが…。何度も修羅場をくぐり抜けてきた虎の4番はどこまでも冷静だった。
「やっぱり『怖さ』もどこかに持っておかないといけないと思います。流れとか場面もありますから」
確かにイケイケの感情は時にリスクも伴う。必要以上の積極性が空回りすれば、ボール球にがっつき、最低限の仕事さえ果たせない可能性も出てくる。
「野球には流れがある。流れを敏感に感じ取る能力は本当に大事。初球から行った方がいいケースもあれば、初球を打ったら相手に流れが傾く場面もある」
今年2月のキャンプ中に力説していた「流れを読む作業」を今は徹底できているのだろう。「捕手に嫌がられる打者になりたい」と目標を立てていた24年。まれに見る絶不調期を乗り越えた夏場以降、好機での確実性は今まで以上に高まっているように映る。
「それに…みんな打ってくれていますからね」
最後、大山は仲間との相乗効果も強調した。
得点圏打率上位4傑では3割6分3厘の大山を筆頭に2位森下翔太が3割5分、3位佐藤輝明は3割4分3厘、4位近本光司も3割2分6厘を誇る。
マークを1人に集中させない猛虎打線。勝負の秋、相手バッテリーに嫌がられる「つながり」を完全に取り戻しつつある。【野球デスク=佐井陽介】



