<中日0-3ヤクルト>◇30日◇ナゴヤドーム

 ベンチの一番奥で無表情を貫くはずの中日落合監督が、まさかの光景にぼうぜんとなった。1点ビハインドの9回表2死二、三塁。3番手で送り出した守護神岩瀬仁紀投手(34)が、初球のシュートを青木のヘルメットにぶつけた。頭部死球でプロ初の危険球退場。逆転勝ちへのシナリオが一瞬で台無しになった。代わった4番手高橋が武内に決定的な2点適時打を浴びた。「今日は何もない」。指揮官は会見を一方的に打ち切った。

 勝負手だった。1点ビハインドでの守護神投入は本来は禁じ手。だが、先発吉見が8回7安打1失点と好投しながら、攻撃陣が再三のチャンスをつぶして援護できなかった。流れを変える必要があった。追加点を絶対に与えたくない事情もあった。あえて岩瀬を送り出し、捕手も代えた。右ふくらはぎの不安をかかえたまま前日4月29日に出場選手登録した谷繁を「抑え捕手」として初投入。ベンチの執念を采配で示した。

 今季早くも2度目の同一カード3連戦3連敗を喫した。ヤクルト戦は5連敗となり、借金は今季ワーストの3に膨らんだ。5位で5月を迎えるのは04年の落合政権発足後初めてだ。荒木、井端、谷繁ら主力が不安をかかえたまま開幕を迎えたことに加え、4番ブランコの調子が上がってこない。岩瀬は「まだ流れに乗れない。チームも自分も。力は入っていたけど…。考えすぎても状況が変わることはない。青木のことが心配です」と自らに言い聞かせるように話した。谷繁は「何もないよ」と話した。

 落合監督は前日の敗戦後「もうちょっとの辛抱なんだろうな」と現状を受け止める覚悟を示している。苦しみ、のたうち回った後に、本来のチーム力が戻ると信じるしかない。【村野

 森】

 [2009年5月1日11時51分

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