プロ野球の広島、阪神で活躍した金本知憲氏(45)が13日、さいたま地裁で、知人からの投資詐欺に関する裁判に証人出廷し、04年ごろから約6年にわたり、計8億円近くを振り込んでいたことを明らかにした。裁判は、ボートレース(競艇)団体への預託金などの名目で、無職本多善光被告(45)が金本氏から1億円以上だまし取ったとして、詐欺罪に問われたもの。金本氏は「親友と思っていた気持ちを踏みにじられた」と語った。

 濃紺にストライプのスーツ姿、手には裁判所の許可を得たペットボトル。証人出廷した金本氏は、証言前に持参した飲料水を口にふくみ、その心中は、親友だと思っていた本多被告に裏切られた悔しさと、8億円も提供した自身へのいら立ちに支配されていた。

 金本氏は「本多被告とはずっと家族ぐるみの付き合いをしていた。何かあっても大丈夫だと思った」と、本多被告を信頼していたことを述べた。その一方で「自分はばかだったと思う」とも振り返った。

 金本氏の証言によると、04年ごろから09年末までの間に、少なくとも計8億円近くを本多被告の口座に振り込み、返金されたのは約800万円にとどまるという。金本氏は「多い月には3000万~4000万円を本多氏の口座に振り込んだ」といい、資金の大半を取り戻せていないことについては「両親にいち早く家を建て(てあげ)たいと思っていたのにできなかった」と、ストレートに悔しさを表現した。

 金本氏と本多被告は、金本氏が03年に阪神へFA移籍する以前、広島時代からの知り合い。金本氏は阪神移籍初年度だった03年、タイガースの18年ぶりリーグ優勝に大きく貢献。04年は、連続試合フルイニング出場の日本新記録を樹立し、最終的には打率、本塁打、打点の3部門で自己最高記録を達成、打点王も獲得していた。本多被告の誘いに乗り、投資を始めたのも、この時期で、当時は、選手としての絶頂期だった。

 この日、金本氏は、資金提供の理由について「引退後に収入を得られるものとして魅力的だと思った。後輩たちの引退後の就職先にもなると思った」と説明した。本多被告との関係については「一番の親友だと思っていた気持ちを踏みにじられた」とし、裁判官には「できるだけ重い処罰を」と訴えた。

 起訴状によると、本多被告は06~09年、10回にわたり、ボートレース団体への預託金や農地取得などの名目で計1億1680万円を詐取したとしている。

 本多被告はボートレースの場外発券所を建設する会社(東京)の元役員。これまでの公判で「だますつもりはなかった」として起訴内容を否認している。

 ◆金本氏の詐欺被害事件経緯

 昨年10月、金本氏に架空の農業法人への投資話を持ちかけ、計1880万円をだまし取ったとして、埼玉県警が、詐欺の疑いで本多被告(当時・容疑者)を逮捕した。逮捕容疑は、08年11月ごろ、本多被告が金本氏に、農業法人の事業拡大を目的とした虚偽の投資話により、同年12月下旬に550万円を送金させたというもの。09年1月、2月にも農地取得、トラクター購入の名目で620万円、710万円をだまし取ったとしている。その後、埼玉県警は、本多被告が04年5月に設立したボートレース投票券の場外発売所などを建設する会社の元役員で、金本氏がこの会社の事業資金名目などで繰り返し、現金を本多被告に渡していたことから、関連を捜査していた。