<中日7-2ヤクルト>◇8日◇ナゴヤドーム

 中日和田一浩外野手(41)のメモリアルシーズンが本格スタートした。今季中の2000安打達成を視野に入れるプロ18年目が、史上39人目となる通算300号を放った。8回無死一塁から今季2号となる2ランを左翼席に運びチームの2連勝を決定づけた。これで通算1000打点まであと4打点、2000安打まであと93本となった。

 和田らしいスピンの効いた放物線だった。3点差まで追い上げられて迎えた8回無死一塁。真ん中に入ってきたヤクルト真田のスライダーに反応した。左足をグッと踏み込み、ボールをこすり上げる。「打った瞬間にいったと思った。何とかつなぎたいと思っていた」。滞空時間の長い打球が左翼席に着弾した。本塁を駆け抜けて花束を渡されると、ナゴヤドームの歓声に手を挙げて応えた。

 高校卒業後、東北福祉大、神戸製鋼を経てプロ入りした。もっとも思い出に残る本塁打を問われると「1本目です」と即答した。初アーチはプロ2年目、西武時代の98年8月4日近鉄戦。「まだ軌道というか感触が残っている。ああ、これでプロでやっていけるかなというのはあった」。そこからコツコツと積み上げた300本は“史上最遅”。それだけ長くプロの世界でレギュラーを張ってきた証拠だ。

 スタイルは曲げない。お立ち台では300号について問われても「僕はホームランバッターじゃないですから」と苦笑いだった。「ホームランバッターは打ち損じがヒット。僕の場合はヒットの延長がホームラン」。オフに5キロ近く体を絞り、シーズンに臨んだ。本塁打を量産するパワーはいらない。鋭い打球を飛ばす-。これが和田の理想だ。

 プロ18年目。一流と言われる立場になった。ただ、最近になって感じることもある。「やっぱり打つべくして打っている。上がるべくして打球が上がる。道具の使い方が違う」。落合GMのことだ。今でこそないが、中日にFA移籍して教えを直接受けた。当時はそこまで気付かなかったが、自身も年を重ね、技術向上したからこその発見がある。そんな新たな刺激を求め、グラウンドに立ち続け、通算1000打点は目前。2000安打にも着実に近づいている。

 開幕からチームは12年ぶりの3カード連続負け越し中。6番に座る和田も打率1割台と低迷し責任を感じていた。「ピッチャーと勝負というか、自分と勝負していた。メンタルの弱さが出ていたのかもしれない」。再浮上へ。メモリアル弾がきっかけになるかもしれない。【桝井聡】

 ▼通算300本塁打=和田(中日)

 8日のヤクルト1回戦(ナゴヤドーム)の8回、真田から今季2号を放って達成。プロ野球39人目。初本塁打は西武時代の98年8月4日の近鉄17回戦(大阪ドーム)でマットソンから記録。41歳9カ月での到達は01年広沢(阪神)の39歳5カ月を抜く最年長記録。