<パCSファイナルステージ:ソフトバンク1-5日本ハム>◇第2戦◇16日◇ヤフオクドーム

 道産子がCS初勝利だ。日本ハム2年目の鍵谷陽平投手(24)が、3番手で2回1安打無失点に抑え勝ち投手となった。オリックスとのファーストステージも含め3試合連続無失点の快投。相手アドバンテージを含め2敗スタートと劣勢のチームに、シンデレラボーイが誕生した。

 使命に燃えた。鍵谷の顔は、試合後もこわばったままだった。「CSの大事な場面で投げさせてもらえるとは思わなかった」。出番は5回に回ってきた。打順は先制弾を放っていた内川から。敵地の大声援も耳に届かないほど、集中力を高めた。こん身の146キロ直球で二飛。強打者をねじ伏せていった。2回無失点。奮闘の証しは白星になって返ってきた。

 執念の継投策の主役になった。先発中村が誤算の大乱調。栗山監督は「短期決戦は待っている場合じゃない」とロング救援要員の谷元に代えて、鍵谷に勝負を託した。オリックスとのファーストステージ第3戦では3者連続三振など、初めての大舞台で堂々の投球を披露。「冷静に、して良いことと悪いことを整理してマウンドに上れている」と、この日も落ち着いて勝負に臨んだ。

 新たな歴史を紡いだ。北海道移転後11年目。ポストシーズンでは北海道出身の道産子選手として初出場、3試合目で初勝利の快挙を成し遂げた。「北海道の人たちに、また良い結果を見せられたかな」と笑った。12年に地元の名門、北海から中大を経てドラフト3位で入団。ルーキーイヤーにプロ初勝利を挙げるなど、順風満帆に歩み始めた。

 飛躍が期待される2年目の今季。暗闇に包まれた。「どうやって投げていいか、わからなくなった」。制球難などの不振が続き、生まれ育った北海道を離れて千葉・鎌ケ谷の2軍生活が中心になった。体の使い方など、一から取り組んだ。尊敬する中大時代の先輩の巨人沢村、ベテラン武田久の黙々と練習に励む姿に、自分を重ねた。

 今季終盤で返り咲いた1軍の舞台。本拠地・札幌ドーム初勝利など成長の足跡を残した。信頼を勝ち取り、大一番の舞台が用意された。「僕は1年間、何もしていない。大事なところで0に抑えないと1年間、戦ってきた選手に申し訳ない」。信念の行き着く先に、最高のラストが待っている。【田中彩友美】

 ◆プレーオフ、CSの北海道出身の勝利投手

 日本ハムでは鍵谷が史上初めてで、千葉登録だが留萌市出身のソフトバンク五十嵐亮太が前日15日の日本ハム戦で勝利している。ほか登板は05年に西武三井浩二(足寄町出身)が第1ステージ第1戦に2番手で登板し敗戦投手。ロッテ古谷拓哉(北見市出身)は昨年のファイナルステージ第3戦で先発し黒星がついた。出身地ではないが、駒大苫小牧高出身の楽天田中将大は通算3勝している。