やれんのか!

 イノキがフジナミに闘魂注入だ。IGFのアントニオ猪木会長(69)が24日、日刊スポーツの独占直撃に答え、阪神ドラフト1位、大阪桐蔭・藤浪晋太郎投手(18)に熱いメッセージを送った。阪神競馬場のイベントにゲスト出演。失敗や故障を恐れず、1年目からフル回転するくらいの器量を持てと語った。

 その名前を聞くと、猪木氏の眉がピクリと動いた。「フジナミ」。自らを慕ってプロレス界に入門し、新日本プロレスを共に支え、リングで戦ったこともある愛弟子・藤波辰爾氏(58)と同姓。野球界のスーパールーキーに対し「聞いたことはあるよ。あの背の高い子だよね」と反応した。

 世界中を飛び回る猪木氏の脳裏にも、甲子園春夏連覇の怪物投手は刻み込まれていた。阪神の、そして、野球の新星をめぐって球団内には1年目から即戦力と考えるべきだという積極論と、慎重論がある。猪木氏は双方にうなずきながら、世界を相手にしてきた猪木イズムを語った。

 「チャンスってわからないから。一瞬でつかみきれるかどうか。今、何歳?

 18か。体はできているわけだから。金田さんだって、稲尾さんだって、投げていた。酷使しても耐えられる。それくらいの器量がないとね」

 ここにきて担当の中西投手コーチが開幕ローテーションで起用する構想を明かすなど、藤浪は即戦力という見方が強まっている。猪木氏が期待したのは1年目から鉄腕・稲尾ばりのフル回転。やはり、格闘界のカリスマが考えることは規格外だ。

 「それで失敗しても、それがいい経験になる。そこから立ち上がっていける」

 通算400勝の金田氏は、享栄商を中退して国鉄に入団した1年目に8勝を挙げた。通算276勝の稲尾氏も高卒1年目から21勝をマーク。日本シリーズでは全6試合に登板した。猪木氏も東京プロレス倒産、日本プロレス追放などをバネに、はい上がった過去がある。恐れずに前に進み、道を開いてきた。

 「人間って不思議なもので1度、前に出れば、それが次から普通になってくる。きょうもビンタされたいやつって聞いたら、真っ先に名乗り出てきた選手(騎手)がいてね。やはり、人と違うことをしないと。みんな(自分が)プロだと思っているけど、俺からするとまだまだという思いがある」

 横に並ぶな。前に出ろ。迷わず行けよ、行けばわかるさ-。プロフェッショナルを強く意識する猪木氏ならではの強烈でメッセージ性のあるエールだった。【鈴木忠平】