気がつけば、安定王者である。WBC世界ライトフライ級王者拳四朗(26=BMB)。25日、東京・大田区総合体育館で3度目の防衛戦を行い、昨年5月にベルトを奪った前王者ガニガン・ロペスに2回1分58秒、KO勝ち。右ボディーストレートでもん絶させた。

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ 2回、ボディでダウンを奪う拳四朗(右)(2018年5月25日撮影)
WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ 2回、ボディでダウンを奪う拳四朗(右)(2018年5月25日撮影)

 お見事。圧巻。瞬殺。拳四朗と、父の寺地永会長(54)が「想定外!」と口をそろえる鮮やかさ。当然2人とも「今度は目立ったやろ」と思ったはずが、メインで“モンスター”井上尚弥がバンタム転向初戦にして、さらに早い1回1分52秒KO勝ちで3階級制覇を達成…。井上の勝利はもちろん喜ばしいけど、また目立ち損ねてしまったと言えなくもない。

 拳四朗は昨年5月から計4度、世界戦を行ったものの、1度も自分だけの“シングル世界戦”がない。最初の2試合はWBA世界ミドル級王者村田諒太、最近2試合は井上と同日、同会場で行った。帝拳ジムがプロモーションする興行に“入れてもらって”のダブル、トリプル世界戦。つまり、村田、井上のスケジュールに合わせて、試合が決まる立場にいる。

左からWBC世界ライトフライ級王者拳四朗、井上尚弥、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル、ガニガン・ロペス(2018年5月23日撮影)
左からWBC世界ライトフライ級王者拳四朗、井上尚弥、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル、ガニガン・ロペス(2018年5月23日撮影)

 寺地会長は「ウチは帝拳さんにお世話になってますから。それで全然問題ないし、ええと思ってますよ」という。拳四朗は拳四朗で、誰とやりたいとか、最強を目指したいとか、プロボクサーが持っていて当然の“ギラギラ感”が皆無のタイプで「う~ん、相手は誰でもいいですからね。僕は決まった相手に勝つだけと思ってます」という。

 しかし、計4度の世界戦を取材したこちらにすれば、もうちょいグイグイいってもええんちゃうの、と思う。今回の防衛戦でロペス陣営が持っていたオプション(対戦相手等を選ぶ権利)は消化され、指名試合(WBC同級1位選手の挑戦を、1年以内に受ける義務試合)を除けば、次戦から相手を好きに選べる立場になった。さらに、村田、井上の両王者が次戦は米国で行う予定。いろんな意味で“縛り”はない。じゃあ、次は初の地元関西での防衛戦開催チャンスでは…と思ったりしたのだが…。「いや~、まだ無理でしょ。関西で、1人で世界戦やっても、お客さんは集められませんよ」と寺地会長に、あっさり可能性を否定されてしまった。

 ダブル、トリプル世界戦が別に悪いと思いません。ただ、そればっかりやなくて、もうちょい有名に、ビッグになってほしいだけな訳です。

 「有名になりたい」が口癖の拳四朗はバラエティー番組からオファーが来たら、喜んで出演してるし、寺地会長も「ぜひぜひ」と後押ししてる。防衛を重ねることで、自然と知名度、存在感は高まってくるものですが、それだけではつまらんし、時間もかかる。そこで、考えた。「拳四朗&会長のパック売り」はどうでしょう?

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチで防衛に成功した拳四朗(右から2人目)と父の寺地永会長(左から2人目)(2018年5月25日撮影)
WBC世界ライトフライ級タイトルマッチで防衛に成功した拳四朗(右から2人目)と父の寺地永会長(左から2人目)(2018年5月25日撮影)

 親子そろって天然キャラで、人に好かれることはあっても、嫌われることはまずないタイプ。父は元日本ミドル級&東洋太平洋ライトヘビー級王者で、身長189センチ。対して拳四朗は164センチ。その差25センチのデコボコ具合には、漫才コンビ「オール阪神・巨人」を思わせる、見た目のおもしろさがある。いらうのが上手なMCの番組なら、人気出ると思うんですけど。拳四朗の世界戦がメインになる日が来るために。テレビ局のみなさん、どないですか?【加藤裕一】