20年の現役生活に幕を閉じ、親方として新しい道を歩む。今場所前に現役引退した元前頭北太樹の小野川親方(35=山響)が、両国国技館で引退会見を行った。「振り返ると短く感じる」とやり切った表情を浮かべたが、心残りはあった。

 昨年4月、春巡業が地元の東京・町田市で行われた。当時十両の北太樹は、1歳半だった長男英慶(えいけい)君を抱いて土俵入り。自分が締めた化粧まわしと同じデザインのミニ化粧まわしを締めさせた。途中で泣かれながらも「記憶に残ってくれたかな」と笑みを浮かべた。

 「子どもの記憶の残る3、4歳まではやりたい」と希望していた。度重なるケガで「体力の限界を感じた」と引退を決意。力士としての相撲人生に悔いはない。それでも「もう1年ぐらいは相撲を取って(息子に)土俵での記憶が残るぐらいは。残念です」と父親としての悔いは残った。

 次は親方として土俵に上がる力士を育てる。「自分が教わった大切なことを伝えたい」。第2の人生で息子の記憶に残る力士を育てる。【佐々木隆史】