1年納めの11月場所も、2年ぶりの福岡開催となる九州場所として無事に終わり、2021年の本場所も閉幕。コロナ禍により何かと行動制限がある中、苦境の中で力士たちは奮闘しました。日刊スポーツでは年末恒例「第10回日刊スポーツ大相撲大賞」を、今年も紙面で掲載しています。競技性の違いで、野球のように個人成績が詳細に出ない中、日刊スポーツの相撲担当記者が、さまざまな角度からデータを抽出し“個人賞”を勝手に制定するものです。ここでは紙面では掲載されないものを紹介します。重ねがさね“勝手に”決めた賞で、ご褒美はありませんのであしからず。対象力士は6場所全てで幕内に在位した力士に限りました。ご了承のほどを…。
【年間彩多賞】
今年1年、最も多くの決まり手で勝った力士は? 多彩な技を繰り出したということで「彩多賞」として認定します!
<1>照強=20手
<2>照ノ富士=18手
<3>霧馬山、豊昇龍=17手
<5>琴ノ若=16手
小兵の業師がナンバーワンの座を射止めました。5人の中で年間勝利数は42勝で最少ですが、20手で決めたということは、ほぼ2勝ごとに決まり手が変わるという多彩ぶり。基本技4勝、投げ手5勝、掛け手3勝、ひねり手4勝、特殊技4勝と、まんべんなく技を出しています。相撲勘の良さが数字に表れました。
また5人の顔触れで特筆すべきは照ノ富士でしょう。180キロを超す体の大きさ、そして(後半2場所は)横綱という地位にありながら、器用さも兼ね備えた力士と言えるでしょう。コロナ禍の前、稽古場取材が許されていたころ、伊勢ケ浜部屋の稽古を活気があり面白く感じていましたのは、本場所ではないのに最後まで目が離せない技の応酬があったからと記憶しています。この2人がワンツーを締めたのも納得です。
【懸賞部門】
◆一獲千金賞
1本あたりの手取りは3万円。ここでは1番あたり100万円を超す懸賞(34本以上)がかかった相撲で、どんな結果が出たか調べてみた。1番あたり34本以上の懸賞がかかった取組は、秋場所千秋楽の結びの一番、横綱照ノ富士-大関正代戦の49本(147万円)が最多で合計10番あった。昨年は5場所で8番あり、そのうち何と7番が大関貴景勝絡みで、実に6勝1敗と勝負強さが際立った。今年、“一獲千金勝負”に最も顔を出したのが照ノ富士の6番で4勝2敗。収支は255万円のプラスだった。続く昨年の“王者”貴景勝は5番で2勝3敗。さらに4番で続く正代は、悲しいかな4戦全敗。この4番だけで489万円を逃してしまった。登場回数は少ないが、勝率10割は横綱白鵬(1勝0敗)、登場時は大関だった朝乃山(2勝0敗)の2人。他に関脇御嶽海が1勝1敗で、この6人が今年、大一番に臨んでいたことになる。一獲千金を夢見て良い新年を…。
【取組時間部門】
◆相撲をこよなく愛したで賞
各力士の1番あたり平均取組時間を算出。速く勝負を決めたい、と思うのが力士の本音だろうが、ケガを抱えたり、腰が重かったりとタイプによって、どうしても長くなりがちな力士の顔触れは、ここ数年変わらない。今年は
<1>高安=23秒5
<2>宝富士=22秒0
<3>逸ノ城=19秒5
<4>霧馬山=16秒6
<5>照ノ富士=12秒2
昨年も23秒5でトップだった高安は、さらに8秒近くも延びた。2位の宝富士も変わらずで、こちらも8秒以上延ばした。この両者は春場所7日目と九州場所2日目に3分前後という、文字どおり“大相撲”を取っており、今後の両者の対戦では水入りの期待が持てるかもしれない?
今年最長の一番は、九州場所4日目の高安-志摩ノ海戦の3分32秒。ここでも高安が絡む。さらに年間で2分以上の取組も、高安と宝富士が最多で各7番、逸ノ城の6番が続く。逸ノ城は九州場所8日目に貴景勝と対戦した際、マゲをつかむ反則で負けたが、2分40秒以上に取った末、物言いがついての勝負判定。息も絶え絶えの末に白星をつかんだ貴景勝には、お気の毒さまの声も…。ご苦労さまでした。
◆勝ったから良しとしま賞
勝った一番あたりの平均取組時間の長かった力士は?
<1>高安=32秒1
<2>霧馬山=27秒2
<3>宝富士=24秒4
<4>逸ノ城=23秒6
<5>栃ノ心=16秒4
前項の「相撲をこよなく愛したで賞」の上位5傑の中から4人が入りました。まあ、予想された顔触れですね。給料は汗をかいて稼ぐ-。そんな、ねぎらいの言葉をかけましょう! 逆に効率良く? 勝った一番あたりの平均取組時間の短かった「省エネ大賞」は、紙面でも紹介したように阿武咲の4秒4でした。もちろん、汗はかいてますよ。
◆踏んだり蹴ったりで賞
負けた一番あたりの平均取組時間の長かった力士は? 勝っていれば心地よい疲労感に包まれるところが、負けたばっかりにドッと疲れが押し寄せてきそうで…。そんな“お気の毒大賞”は
<1>宝富士=25秒8
<2>高安=24秒3
<3>逸ノ城=19秒7
<4>翔猿=17秒4
<5>琴ノ若=16秒7
やっぱり上位3人は、勝っても負けても、土俵に長く立ち続けました。勝ちみが遅いとか言われますが、一生懸命に最後まで勝負をあきらめない姿勢-と評価しておきましょう。
【金さん銀さん部門】
ちょっと古いフレーズで申し訳ございません…。平幕力士の横綱戦勝利は「金星」として公認されますが、大関戦勝利を“銀星”と勝手に決めて抽出しました。
今年の金星は、秋場所9日目に大栄翔が照ノ富士に勝って奪った1個のみでした。一人横綱の白鵬が皆勤1場所だけで、残り2場所を照ノ富士が埋めた状況で横綱そのものが少なかったとはいえ、昨年の8個に比べれば寂しいもの。来年は平幕勢が波乱を起こし、優勝争いを持ち上げてほしいものだ。まあ、横綱照ノ富士の盤石の強さも、大相撲の理想と言えば理想ではありますが…。
続いて銀星。こちらは年間44個と大盤振る舞いとなってしまいました。献上大関は正代20個、貴景勝16個、朝乃山7個、照ノ富士1個。殊勲の獲得上位は、トップが遠藤の5個。4個は大栄翔、北勝富士、若隆景、霧馬山、妙義龍、豊昇龍と6人が顔をそろえました。
力士のみなさん、1年間ご苦労さまでした。日刊スポーツ大相撲担当一同、新年の活躍も期待しています。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)


