挑戦者の日本、東洋太平洋女子バンタム級王者奥田朋子(37=ミツキ)が、世界初挑戦でベルトを奪取した。「闘うシングルマザー」の王者吉田美代(32=三迫)を6回1分38秒、負傷判定3-0で下した。奥田の戦績は7勝(1KO)2敗2分け、吉田は14勝2敗となった。

先制パンチがすべてだった。1回1分過ぎ、奥田が「練習してきた」という右フックが吉田の顔面をとらえ、ダウンを奪う。その後は譲らない打ち合い。奥田は5回に偶然のバッティングで右目上から出血。その傷が深くなり、7回途中でストップ。最初の貯金を生かし、新王座を手にした。「夢のようですけど、こういう状況をイメージしてました」と興奮した。

高校教師と二足のわらじをはく。通信教育制など3校を受け持つ保健体育の教師がもうひとつの顔。立命大卒業後は、奈良の全日制の高校に普通に勤務していた。しかし、30歳を機に「自分はまだ何かできる。何かしたい」と一念発起し、ボクサーとなった。

大学までは柔道選手。大外刈り、大内刈りを得意とする57キロ級で、大学時代はインカレ5位になった3段を所持する実力者。以前に勤務していた高校では柔道部の顧問を務めていたという。その練習中に右膝前十字靱帯(じんたい)を負傷し、手術した。大みそかに病床で見た4階級世界王者井岡一翔の姿に背中を押されたという。

「教える方もやって、私はプレーヤーがやりたいと思った。楽しいことを突き詰めているので、人生楽しいです」。やりたいことをやり尽くす信念で、世界王者に上り詰めた。【実藤健一】

◆奥田朋子(おくだ・ともこ) 1983年(昭58)4月21日、岐阜県各務原市生まれ。鶯谷高から立命大。卒業後は高校の保健体育の教師。30歳からボクシングを始める。15年4月プロデビュー。今年1月に日本、東洋太平洋女子バンタム級王座獲得。戦績は7勝(1KO)2敗2分け。身長167センチの右ボクサーファイター。