WBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(36=帝拳)が同級最強とされる世界的スターに屈し、2団体の世界王座統一を逃した。

元3団体統一同級王者でIBF世界同級王者のゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)と拳を交え、9回にプロ人生初のダウンを喫し、2分11秒、TKO負け。13年のプロデビューから9年、17年の世界王座初奪取から5年。常に目標としてきた現役レジェンドを撃破できなかった。戦績は村田が19戦16勝(13KO)3敗、ゴロフキンが44戦42勝(37KO)1敗1分け。

【村田諒太vsゴロフキン】村田諒太9回TKO負け、ゴロフキンの強打に倒れタオル/ライブ詳細>>

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「ミドル級最強」の戦いだった。ゴロフキンが村田との歴史的一戦を最高レベルの打ち合いで制した。最後は村田陣営のタオル投入で、9回2分11秒TKO勝ち。「この素晴らしい舞台を用意してくれたすべての人にお礼を言いたい。村田にもお礼と称賛の言葉をおくりたい」と言った。

序盤は危うかった。村田の左右ボディー攻めに苦しんだ。3回のゴング直後にラッシュをかけるが、ラウンド終盤は息切れしたようにつかまった。前日8日に40歳の誕生日を迎えたばかり。年齢、そして体力的な衰えさえ感じさせた。

しかし、鮮やかに形勢を逆転させる。6回には高速の“石ジャブ”から硬い左右フックで村田の足を止め、口からマウスピースを飛ばした。最後の9回は、完全に村田の状態を見切っての猛ラッシュ。「ギリギリの戦いになると思っていた。最初は見守ったわけではないが、だんだんパンチが当たってきた。そして距離感がつかめたのが最も大きかった」。戦い方、勝ち方を知り尽くしていた。

「自分のキャリアの中でも最も印象に残る試合だ。村田は五輪チャンプというだけでなく(WBAの)スーパー王者にふさわしい選手だ。戦えたことは誇りに思っている」

昨年末に予定された試合が、新型コロナウイルスの影響で延期された。2月上旬から米国の南フロリダでキャンプを行い、体を仕上げた。スパーリングも90~100ラウンドこなしたという。年齢的な影響は完全に打ち消していた。

試合後、「最も尊敬している人に贈る」というカザフスタンの民族衣装のガウンを村田に着せた。「村田に対して温かい気持ち、親近感を持っている。尊敬もしている。敬意を示したかった」。スーパースターはおごることなく歴史的な戦いを制した。【実藤健一】

◆ゲンナジー・ゲンナジービッチ・ゴロフキン 1982年4月8日、カザフスタン・カラカンダ生まれ。04年アテネ五輪ミドル級銀メダル。アマ戦績345勝5敗。06年5月に1回KO勝ちでプロデビュー。10年8月、無敗でWBA世界ミドル級暫定王座を獲得。14年にWBC世界同級暫定王座も獲得(いずれも正規王者昇格)。15年にIBF世界同級王座も獲得し3団体統一。17年9月にサウル・アルバレス(メキシコ)と引き分け。18年9月にアルバレスと再戦し判定負けで王座陥落。19年10月にIBF世界同級王者に返り咲いた。身長179センチの右ボクサーファイター。名前の頭文字から愛称は「GGG(トリプルジー)」。