謎のモンゴル人ことキラー・カーンさんがこの世を去った。「人間山脈」などと表現されたアンドレ・ザ・ジャイアントの足を骨折させたタフガイ。日本でも北米でも大人気だった。

2年前のコロナ時期。どんな恐ろしい人だろうと勝手に妄想を抱きながら、キラー・カーンこと小沢正志さんに会った。新宿・新大久保の路地。小沢さんの経営する居酒屋「カンちゃん」。突然「店をたたむ」と言ってその年の5月22日に閉店した。新型コロナウイルスのまん延でなかなか営業もできなかった。

客ではない若者がトイレを借りに入店してきたり、店前でたむろして動かず、ゴミを廃棄していなくなる。そんなことを繰り返されて「この街に嫌気がさした」という理由で閉店したが、決して人を責めたりせず「若者は悪くないんだよ」と涙を流していた。

仕事と人が大好きで、店の中のこまごまとした仕事を忙しそうにやって、客の誰かがポツンとしているとしゃべりかけていた。195センチの巨体をゆさゆさ揺すりながら、お店のあっちこちをずっと歩いていた。落ち着かない、何かをやっていないと、誰かとしゃべっていないと歩き出してしまう。寂しがり屋だから、人と接していないと不安になっちゃうのかなと感じた。

「店が終わってから話そう」と言われて、サラダ付きカレーライスを注文した。「これね、(歌手の)尾崎豊くんが大好きで通ってくれたんだ」と話してくれた。多くのフルーツを溶かし込んだルーらしいが、家庭のカレーという味わい。特徴があるとすればどこか懐かしさをくすぐられるという感じだった。生前の尾崎さんは家庭のぬくもりに飢えていたのかもしれないとも思えた。

当時は「オレさ、仕事が大好きでさ。今度はカラオケスナックをやりたい。オレよりお年寄りのおばあちゃんやおじいちゃんが楽しく歌えるところね。密にならない広い物件ないかな」と、今度は楽しそうに笑った。カンちゃん、天国でいっぱい歌ってね。安らかに。【社会担当=寺沢卓】