ボクシングWBOアジア・パシフィック・バンタム級王者の那須川天心(26=帝拳)が日刊スポーツで、不定期コラム「天心新聞」を執筆します。15歳から格闘家として活躍し、キック界の「神童」と呼ばれてトップを走り、ボクシング転向後も5戦5勝。24日には東京・有明アリーナで前WBO世界同級王者ジェーソン・モロニー(34=オーストラリア)との10回戦も控えています。格闘家の枠にとどまらない活動も展開する那須川ならではの感性で「思うこと」を語ります。第1回は「狼煙(のろし)を上げる」です。
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なぜ今、新聞でコラムをやるかって? 疑問に思う方もいるかもしれないけど、僕は活字がめちゃくちゃ好きなんですよね。正直、SNSは飽きちゃっていて…。今の若い人と少し感覚がずれているんすよね。活字だからこそ意味があると感じていて。残るからこそ本気で、今の気持ちを伝えていきたいなと思ってます。
僕は掲載された新聞や記事を結構、読んでいて「ここはカットされるのか」「こういうとらえ方をされるのか」と思いながらみていますね。今は地元に戻ると親よりも上の年代のおっちゃんたちに「最近、めっちゃ新聞に出ているね」と言われたりして。その世代の人が新聞をしっかり読んでいると実感してますね。
会見や公開練習で取材を受ける時、いつも僕は記事の「見出し」になることを話さないといけないと思ってますよ。必殺技じゃないけど、言葉にパンチがないとダメだと。テーマ、ワードを持っていきたいって。ユーチューブ、インスタグラム、Xもあるけど、僕は会見という「場」が好きなんで勝負してますね。
会見では「何を言うんだろう?」「コイツちょっと何?」という空気感を大事にしていて。好きなお笑いはシュールなジャンルなので「ふざけているの?」「真面目? 冗談? どっちなの」と戸惑わせる「間」がたまらなくて。時にスベっていると言われたりもするけれど(笑)、僕はそういう空気を楽しんでいますね。いつも人前に出るとはどういうことかと考えて、取材している人、その記事を見る人たちが満足するものを提供したいし。お客さんを楽しませるのがプロ。取材を受ける時もプロ対プロとして思い切りぶつかっていく気持ちでやってます。
15歳でプロになって、取材は普通にこなすことはできたけれど、最初は「え? 何?」みたいな引っかかるように対応はできなくて。格闘家は格闘技を見ている人たちに向けて話していると思っていたので、そうなると同じような話になっちゃうんで、僕は世間を意識していましたね。テレビやラジオに出るようになってから世の中に引っかかるように言葉を発したなあと。アスリートであんまり仲良い人はいないのは、インタビューを見ても読んでも感情が乗れない感じがするからかなと思ってますね。
もちろん優勝したり、世界一になった人に向け「おめでとう」という強い気持ちはありますけど…。僕はこういう思いで、こういうことを考え、こうなんだと伝えたいんですよね。そうすればまた次も見てくれる人がいるんじゃないかなと思うし面白いと。そういう面白みをずっと探してます。
プロボクシングはスポーツであり、興行でもありますよね。お客さんに見に来てもらっている立場。キックの頃から思っていることだけれど、協会や団体が選手の知名度アップを考えてくれるわけではないし。セットしてもらった試合や会見で、選手が一挙手一投足でみせていくしかないと思ってますね。そこで批判や否定を怖がっていたら何も生まれないし。人前に立つ=何が起きても受け入れるみたいな。僕は何を言われても僕なのだからと思うようにしてますね。
もともと誰かにおんぶに抱っこというのが嫌なので、自分から発信してファンになってもらいたいし、それがすごく大事。ファンになってもらうために、新聞やメディアに取り上げてもらいたい。なので取り上げてもらうために見出しを考えていて、という作業を続けてますね。そういうのは地道なものだし、少しずつ、毎日、コツコツとやるしかないんですよね。
今年の僕は「狼煙を上げる」という表現がピッタリなんですよ。根っからの歴史が好きで、狼煙の存在を知って。実際に映像で煙が上がり、これが戦いの合図なんだというシーンを見た時、まさにそれだと思いましたね。狼(おおかみ)に煙という漢字も格好いいじゃんって。「革命を起こす」という直球よりも同じ意味で「狼煙を上げる」の方が俊逸だなと。われながらいいと思ってます(笑)。普段から考えているからこそ出たワードだし「見出し」を意識しているからこそ生まれたと思っていて。この天心新聞も、今年の大きな狼煙だと思って読んでもらえたらうれしいですね。(「天心新聞」編集長・那須川天心)
◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年(平10)8月18日生まれ、千葉・松戸市出身。5歳で空手を始め、小学5年でジュニア世界大会優勝し、キックボクシングに転向。14年7月、15歳でプロデビュー。15年5月にプロ6戦目で史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得。16年からRIZINなどにも参戦。18年6月に階級を上げ、初代RISE世界フェザー級王者に。22年6月、K-1の元3階級制覇王者・武尊を判定で下した。23年4月に6回判定勝ちでボクシングデビュー。24年10月にWBOアジア・パシフィック・バンタム級王座獲得。身長165センチの左ボクサーファイター。

