7場所連続休場中の横綱稀勢の里(田子ノ浦)が3日、横綱白鵬が所属する名古屋市内の宮城野部屋へ初めて出稽古した。前日2日には、同市内の九重部屋に出稽古した際に白鵬と偶然居合わせて三番稽古を行い、「目覚めた」などと好感触をつかんでいた。「昨日横綱の胸を借りて非常に良い稽古になったので今日もと思って」と稀勢の里の希望で、2日夜に宮城野部屋に連絡して訪れた。

 しかしこの日は白鵬と相撲を取ることはかなわず、出稽古に来ていた平幕の正代と11番取った。立ち合いで押される場面が目立ったが、逆転の送り出しや突き落としを見せるなど体の動き自体は悪くはなく全勝。「昨日で感覚と体のスピードが出てきたと思います」と、前日の白鵬との三番稽古が効いていたという。

 白鵬と相撲を取らなかったことに関しては「タイミングとかいろいろありますから」と少し物足りなさそうに話した。それでも最後のぶつかり稽古では白鵬の胸を借りて「新大関、新横綱の時もぶつかってましたから。ありがたい。1人ではできないですから」と感謝した。

 師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)も同部屋を訪れて、弟子の稽古を見守った。同親方は「受けるところもあるけどあれぐらいはね。相撲を取って体も戻さないといけない」と話した。また「強い力士と当たっていかないと。場所に出れば必ず当たるので」と、本場所を見越しての稽古だったとも明かした。ただ名古屋場所(8日初日、ドルフィンズアリーナ)の出場はいまだ明言しておらずこの日も「慎重に考えたい」とした。

 一方の白鵬は、稀勢の里が出稽古に訪れたことに関して「いかに昨日の稽古が良かったかを物語っているね」と満足そうに話した。ただ相撲は取らず「昨日で十分でしょ」と理由を説明した。

 この日に32歳となった稀勢の里。報道陣から用意してもらった七夕の短冊があしらわれたケーキに、チョコレートソースで「平常心」と書いた。「いろいろあるけど平常心で場所を乗り切れればいいと思うし、そういう思いで稽古している。最後まで相撲を取ったことないから、しっかりそこに向けて準備したい」。横綱として千秋楽まで相撲を取ったのは、新横綱場所の昨年春場所のみ。今はなりふり構わず、がむしゃらにもがいている。