大関陥落後すぐの返り咲きを期す関脇栃ノ心(31=春日野)が、豪快に全勝を守った。元大関琴奨菊のまわしをつかむと、176キロの相手を一瞬浮かせ、一気に寄り切った。

初日から7連勝は大関昇進を決めた昨年夏場所以来だが、当時の7日目は不戦勝。相撲を取っては、幕内59場所目で初。賜杯争いに身を置き、大関復帰条件の10勝まで残り3勝だ。

立ち合いで押し込まれてから、栃ノ心が怪力を発揮した。左前まわしをつかみ、引きつけると176キロある琴奨菊が一瞬浮いた。右下手でまわしを取るともう万全。つり技のように寄っていき、軽々と土俵の外に持っていった。

「止めたから良かったけど、それまではね」と立ち合いを反省しつつ「(まわしを)取ってからは…ね」。7日連続まわしを取って、勝ちっ放しの7連勝をうれしそうに振り返った。

節目の7日目だった。初優勝した昨年初場所は幕内自己最長の6連勝で迎え、鶴竜に負けた。大関昇進を決めた昨年夏場所では自己最長の12連勝を経験したが、7日目は遠藤休場による不戦勝。相撲を取っての7連勝は幕内通算59場所目にして、自己最長となった。「最長? 違うだろ? 違うだろ?」と言いつつ、笑みがこぼれて仕方ない。

東京場所は基本、自宅で夕食をとる。ラム、牛、豚を10キロほど買い込み、冷凍しておき、ジョージア風の鍋を作り置きしたり、後援者にもらった霜降り和牛のステーキをパクつく。舌の肥えたワイン農家の息子には、約1年前から「ソムリエになりませんか?」と資格認定団体からオファーが来ている。味覚に自信のある料理好きが、場所中一番リラックスするのは、食後のひとときだ。

大関陥落した春場所後、巡業からフルに稽古した。大関の重圧もない。自信はある。それでも「気持ちいいね。久しぶりだよ」と、今場所定番のセリフは小声でしゃべる。「まだ大きい声でしゃべる結果残してないからね。それができたら、大きな声で言うよ」。大関返り咲きへ、あと3勝。その先の2度目の賜杯へ。油断禁物とわかっている。【加藤裕一】