6場所連続休場明けの横綱白鵬(36=宮城野)が、大関照ノ富士との全勝相星決戦を小手投げで制し、復活の全勝優勝を果たした。進退を懸けて臨んだ今場所で、昨年春場所以来45度目の優勝。歴代最多を更新する16度目の全勝、横綱大鵬の5場所連続休場明け優勝を抜く最長ブランク優勝など、新たな記録を作って綱の威厳を示した。次の目標には、あと1勝で達成する横綱900勝を掲げるなど、現役続行に意欲を示した。
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雌雄を決した白鵬は、鬼の形相で感情を爆発させた。土俵上に突っ伏す照ノ富士。一呼吸置き、右腕を激しく振り抜いてガッツポーズ。そして、鬼気迫る表情で両拳を作り、小さくも力強くガッツポーズ。「この一番に全てを懸ける、というね」と一番に懸ける思いが土俵上でたまらず出た。
両者にらみ合いとなった立ち合いで、照ノ富士の後に手を着いた。今場所初めて右のかち上げを見せ、回り込んでからは強烈な張り手を浴びせた。距離を詰めて右四つ、左上手を取ってがっぷり四つ。上手投げで振り、照ノ富士の体勢を崩した。両腕で相手の右腕を抱え、力いっぱいの小手投げで勝負あり。「激しさの中に冷静さがあった。最後は力を振り絞った」と、取組後は冷静に振り返った。
6場所連続休場明け、そして進退を懸けて臨んだ今場所。3月に手術を受けた右膝は、場所前も腫れが残っていた。その状況でつかんだ16度目の全勝優勝。「まさか全勝優勝なんて場所前からは思わなかった」。名古屋場所は、15年前に新横綱で臨んだ思い入れ深い場所でもあった。「綱とりの気持ち、初心の気持ちで臨んだのか結果につながった」としみじみ話した。
秘める思いは、他にもある。かねて、東京五輪までの現役続行を強く望んできた。18年に死去した父ムンフバトさんは、レスリングのモンゴル代表として64年の東京五輪に出場した。それだけに「東京オリンピックを現役で迎えることを達成した。おやじとの約束も果たせた」と喜んだ。また、場所直前には、兄弟子の元幕内光法、峯山賢一さんが新型コロナとの闘病中に死去。「大先輩でかわいがってもらった人。いい姿を見せられてよかったと思います」としのんだ。
進退問題をクリアし「これでまた前に進める」とすがすがしい表情を浮かべた。これまで数々の記録を更新。次なる目標を問われると「これで横綱として899勝。あと1勝目指して頑張りたい」と、節目の横綱900勝を見据えた。復活優勝を果たした白鵬の目は、まだ光を失っていない。【佐々木隆史】
▽伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士) (結びの一番は)互いに気合が入った相撲だった。白鵬は相手をよく見ていた。全勝で(横綱の)責任を果たしたのでは。(地方場所を終えて)違った環境でも、力士らは力を存分に発揮してくれた。

