初日から3連敗を喫していたかど番の大関貴景勝(25=常盤山)が、必死の相撲で初日を出した。新鋭の東前頭筆頭豊昇龍を突き落として1勝3敗。首の状態が懸念される中、本来の圧力ではなかったが、相手の攻めをしのいで白星をもぎ取った。成績的には苦しい滑り出しとなったが、2度目の大関陥落阻止に向け、ひとまずトンネルを脱した。新横綱の照ノ富士ら4人が初日から4連勝とした。

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後手に回る展開だったが、貴景勝の執念が上回った。のど輪で豊昇龍に押し込まれて、一時はまわしも許した。小手投げで何とか振りほどいて距離が生まれると、突っ込んできた相手を左にかわして突き落とし。快勝ではなかったが、悪い流れはひとまず断ち切った。

前日の逸ノ城戦では、立ち合いでもろ手突きを選択。先場所を途中休場する原因となった首のケガが心配されたが、この日は頭から何度も当たった。「相手がどうより、自分がどういう気持ちでやっていくかしか、考えていない」。持ち味の突き押し相撲を信じて土俵に上がった。

不振の中でもがき続ける姿勢に、周囲も復調を期待する。「必死さだよね、必死さ」と勝因を挙げたのは八角理事長(元横綱北勝海)。「当たりが弱いし重さはない」と状態の悪さを指摘するが「でも、本場所でこういう相撲を取っていけば重さは出てくる。我慢しながらということが大事。光が見えてきたんじゃないか」と話した。

師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)によると、場所前の約2週間で番数は1日15~16番。「いつもより多くはこなせなかったが、量より質で頑張ってきた。1回勝てば乗っていけるはず」。師匠も願うように話す。19年秋場所以来となる陥落阻止に向け、きっかけとなりそうな白星だが「勝ち負けで何事も判断しちゃダメ」と貴景勝。勝ち負けに一喜一憂しない信条を胸に、窮地を乗り切ってみせる。【佐藤礼征】