西前頭8枚目の錦木(31=伊勢ノ海)が「勝ち越し第1号」となった。千代翔馬の動きを見極め、引いてきたところを一気に押し出した。10日目の勝ち越しは自己最速。06年春場所初土俵の同期で引退した元小結松鳳山の思いも背負う土俵で、伏兵に浮上してきた。横綱照ノ富士、平幕で逸ノ城、翔猿が2敗を守り、勝ち越しを決めた。
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17年目のベテランが初体験の優勝争いにちむどんどん(沖縄の方言でワクワクする気持ち)してきた。錦木はくせ者千代翔馬の動きを見極めて押し出し。10日目の勝ち越しは10勝をあげた18年夏場所の11日目を超える自己最速。「こんなに早い勝ち越しは初めて。うれしいですね」と喜んだ。
今場所は「松鳳山」のしこ名が染め抜かれた浴衣を着て場所に通う。先場所を最後に引退した元小結とは06年春場所初土俵の同期。6歳の年齢差はあるが、「一緒に稽古して食事したりで仲良くしてもらった。年は上だったが気にせずしゃべれる仲でした」と言い、「寂しいが元気な姿を見せたい」と励みにしている。
1度も休場がない。一方で関取まで10年かかった苦労人でもある。幕内に定着できず、今年初場所まで9場所連続で十両生活。一時は166キロまで落ちた体重が172キロまで戻ったのも好調の要因で幕内復帰後は2場所連続で勝ち越している。錦木は「(体重減は)コロナで酒を飲み過ぎないまじめな生活になったからじゃないですか」と笑う。
12年に本名の熊谷から改名したしこ名は、同じ岩手出身で江戸時代の大関から受け継いだ伊勢ノ海部屋の由緒ある名。「(優勝争いは)意識ない。とにかく2桁」という無欲の進撃が「錦木」の名を高める。【実藤健一】
◆錦木徹也(にしきぎ・てつや) 本名熊谷(くまがい)徹也。1990年(平2)8月25日、岩手県盛岡市生まれ。中学卒業後に伊勢ノ海部屋に入門し06年春場所初土俵。15年夏場所新十両、16年夏場所新入幕。ここまでの最高位は19年初場所の東前頭2枚目。184センチ、172キロ。得意は押し。

