力士の喫煙が、SNSで話題になっている。ある幕内力士の食事会での写真が出回り、テーブルの上には灰皿と吸い殻などが写っていた。がっかりするファンもいれば、「そのくらい大目に見てやれ」という反応もあった。

角界に限らず、かつては公の場での喫煙は日常的なことだった。国技館のマス席にはたばこ盆が置かれ、力士は支度部屋でたばこを吸っていた。

日本相撲協会は2005年初場所から国技館内を全面禁煙にし、マス席から灰皿を撤去した。当時、支度部屋は厳密にルールが守られていなかったが、2007年春場所から禁煙が徹底された。その後、支度部屋に隣接する通路のような吹き抜けに灰皿が置かれ、取組の前後にはそこで吸う力士もいた。今は、そこに出入りすることもできなくなった。現在、力士が場所入りした後にたばこを吸うためには、支度部屋を出て階段を上り、所定の喫煙所まで出向く必要がある。

巡業先でも状況はほぼ同じ。どこの体育館も館内は禁煙。巡業事情を知る、ある親方は「巡業の支度部屋で隠れて吸うと問題になる。隠れて吸われると困るから、喫煙所を作ってもらうようにしています」と話す。

所属する部屋での喫煙事情は、師匠の考え方によって異なる。かつては、「たばこを吸ったらクビ」という厳しいルールを設ける部屋もあった。ごく少数だが、稽古を見ながら、上がり座敷で紫煙をくゆらせる親方もいる。傾向として、師匠が喫煙者だと、力士も容認されがち。稽古場の陰に灰皿が置かれ、力士の稽古後の一服が珍しくない部屋もある。

かつての横綱を例に挙げるだけでも、栃錦、初代若乃花、柏戸、栃ノ海、佐田の山らは喫煙者だった。千代の富士は現役途中で禁煙し、横綱になった。近年の横綱でも喫煙者はいるが、力士のアスリート化は年々進んでおり、今は少数派。十両以上の関取70人のうち、喫煙者は十数%ほど。8、9人に1人程度の割合だ。

一般的に力士としては、吸わない方が体にいいことは間違いない。しかし、禁煙者だから出世し、喫煙者は横綱になれないかといえば、そうでもない。プロ野球選手や、サッカーの日本代表クラスでも喫煙者はいる。

違法行為ではないから、吸うかどうかは本人の考え方次第。ただし、時代とともに喫煙者への視線は変わってきている。ファンの受け止め方は、必ずしも前向きなものばかりではない。SNSでアップする可能性がある写真には、配慮があってもいい。「関取衆は子どもやファンに夢を売る仕事なので、できれば見えるところで吸ってほしくない」と指摘する親方もいる。【佐々木一郎】