大関経験者で大けがから復帰した、西三段目21枚目の朝乃山(31=高砂)が、無傷の6連勝で2度目の三段目優勝目前に迫った。16歳の太秦(伊勢ノ海)を寄り切り。1年前に初土俵を踏んだ新鋭にも、事前準備を怠らずに圧勝した。来場所の幕下復帰はほぼ確実。三段目でもう1人全勝の朝玉勢は同部屋のため、6場所出場停止明けの22年名古屋場所以来となる三段目優勝は、千秋楽の優勝決定戦に持ち越す可能性がある。

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見据える先が、はるか上だからこそ容赦はしなかった。朝乃山は立ち合いから1秒後には、右を差し、左上手を引いていた。持ち前の圧力に、攻めの速さも戻ってきた。万全の体勢で完勝。15歳下の太秦はひとたまりもなかった。「相手は右ハズ押しと分かっていたので、上手を取ってから攻めようと心掛けていた」。慢心などない。太秦の取組動画を集め、研究し、逆転の隙を一切見せなかった。

今場所前は「これがラストチャンス」と繰り返してきた。毎日が背水の陣。次に大けがをしたら「引退しかない」と考えている。一方で「残された時間は少ない」。今月で31歳となった年齢面からも、早く番付を戻したい思いは強い。そして「幕内に戻って長く取りたい」。体の衰えという見えない敵が迫る実感、1つも取りこぼしたくない思いが、厳しい攻めに表れた。

東前頭12枚目だった昨年名古屋場所4日目に、左膝前十字靱帯(じんたい)断裂などの重傷を負った。長期離脱を余儀なくされたことを機に、体の隅々を調べた。すると1年半ぶりに訪れた歯科医で、睡眠時に無意識に食いしばり、歯の一部が欠けていると知った。すぐに睡眠時用のマウスピースを作製。昨年末からは2、3日に1度の過酷なリハビリに耐えてきた。元の体に近づけようと努めた。

心も鬼にした。「関取に戻るまでは帰れない」と、年末年始は故郷富山に帰省しないと、関係者に断りを入れた。2月の高砂部屋の部屋開きではOB元横綱朝青龍と対面。入門時は引退していた憧れの存在に「しっかり頑張れよ。応援しているからな」と激励され、気持ちは高ぶった。三段目の6連勝は近大で同期の朝玉勢と2人。同部屋のため七番相撲では対戦せず、優勝決定戦の可能性が浮上も「ここまできたら」と全力で勝ちに行く決意をのぞかせた。「みんなに無理と言われても、また幕内で優勝したい」。2度の三段目転落から、前代未聞の復活が幕を開ける。【高田文太】

近年の朝乃山の浮沈

◆21年5月 新型コロナウイルスのガイドライン違反で夏場所12日目から、師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)の判断で謹慎休場。翌名古屋場所から6場所出場停止処分で大関から陥落。

◆22年7月 西三段目22枚目で7戦全勝で優勝。

◆23年1月 再十両初場所で14勝1敗。十両初V。

◆同7月 名古屋場所は左腕負傷で4日間休場。

◆同10月 秋巡業で左ふくらはぎ肉離れ。11月の九州場所は8日目から途中出場して4勝4敗7休。

◆24年1月 初場所は右足関節捻挫で9日目から休場して、9勝3敗3休。

◆同5月 3年ぶりに三役も右膝を痛めて夏全休。

◆同7月 名古屋場所4日目の一山本戦で左膝前十字靱帯(じんたい)断裂の大けが。3勝2敗10休。

◆25年3月 本土俵は4場所ぶりの復帰となった。