「ヒックとドラゴン」実写版(9月5日公開)は、ほぼ同じストーリーにも関わらず10年公開のアニメ版より27分長い。実写ならではの飛翔(ひしょう)シーンが存分に盛り込まれているからだと思う。まるで本物のドラゴンに乗っているような滑空感が楽しめる。
製作のマーク・プラットは「『トップガン マーヴェリック』を見た時、これこそ私たちが訴えかけたい感覚だと強く思った。あの高揚感や無重力感を、ドラゴンを交えて表現したかった」と言う。
アニメ版は、ディズニーで「リロ&スティッチ」を撮ったディーン・デュポアとクリス・サンダースがドリームワークスに移って初めて3Dに挑んだ作品だった。
北の海に浮かぶ島で暮らすバイキングの一族は、襲来するドラゴンとの戦い明け暮れている。ひ弱なヒックは邪魔者扱いだが、ある日自ら開発した投てき機で数あるドラゴンの中でもっとも知的なナイトフューリーに傷を負わせる。森の中で弱ったフューリーを発見したヒックはトドメを刺すことをためらい、逆に手当てをする。トゥースと名付けられたフューリーとの間には友情が芽生え、やがてそれが一族とドラゴンの関係に変化をもたらす。
2人の監督が端々までこだわった作品は対決から融和を説き、ファミリー映画としての完成度も高かった。ともに製作総指揮に名を連ね、デュポアがメガホンを取った実写版は、リアルな造形でドラゴンの恐ろしさが増幅している。一方で、トゥースだけは豊かな目の表情がアニメ版をほうふつとさせる。作り手2人の優しさがにじんで見える。
ヒック役は18歳のメイソン・デムズ。端正な顔立ちながら、二枚目過ぎないぎごちなさを好演している。父親で一族の長ストイックにはアニメ版でも声を担当したジェラルド・バトラー。相変わらずのいかつさが作品の重しになっている。
原作者のクレシッダ・コーウェルが幼時を過ごした無人島で聞いた伝説をヒントに書いた物語。想像力豊かなコーウェルは「頭上を飛び交うドラゴンや水平線に現れるバイキングの船を思い描いた」と振り返る。
そんな原作者のイメージが実写版では文字通りリアルに再現されたと思う。が、ドラゴンに乗った時のスピード感だけはその想像を超えているかもしれない。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




