新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月中旬から閉鎖されていたアメリカ最大手映画チェーンAMCが、約5カ月ぶりに20日から営業を再開することが決まりました。
同じく大手映画チェーンのリーガル・シネマズも翌21日から営業を再開させることを明かしており、いよいよ段階的に映画館の再開がスタートします。大手チェーンの1つシネマークは、一足先に14日からテキサス州の一部劇場をオープンさせており、今月中には営業再開が認められている他の州でも順次営業を再開させていくようです。
ただ、全米最多となる60万人を超える感染者が出ているカリフォルニア州では、映画館の再開は依然として認められておらず、AMCも全米およそ600カ所のうち20日に再開するのは、全体の6分の1のおよそ100強の映画館にとどまる見通しだといいます。
その後は徐々に上映館数を増やし、9月3日までに全体の3分の2程度の劇場を再開させる方針を示しています。
ロックダウンされた3月中旬以降は新作映画の公開はほぼ全てが延期や中止となっているため、AMCでは「グーニーズ」(1985年)や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年)など80年代の名画や、ディズニーの実写「美女と野獣」(17年)、「ブラックパンサー」(18年)など過去の大ヒット作がラインアップされています。
そして21日にはパンデミック後初の新作となるラッセル・クロウ主演の「アンヒンジド」が公開され、その翌週には映画版「X-MEN」シリーズのスピンオフで初のホラー映画となる「ニュー・ミュータンツ」が、そして9月3日にはいよいよ待望のクリストファー・ノーラン監督の新作「TENET テネット」も公開を控えています。
しかし、「TENET テネット」が公開される9月3日までにロサンゼルス(LA)やニューヨークなど大都市の映画館は営業を再開していない可能性が高く、話題の新作が最も重要な市場である大都市では上映されないという異例の事態になると予想されています。ノーラン監督はコロナ禍で苦しい劇場を自らの新作で救いたいと当初は7月17日に公開を予定していましたが、アメリカ国内での感染拡大が勢いを増す中、3度の延期を余儀なくされていました。
大作映画の場合は通常、世界同時公開がこれまでの常識でしたが、配給するワーナー・ブラザースはコロナ禍のアメリカで劇場再開のメドが立たない中、すでに映画館が再開しているイギリスやフランスなど欧州の一部地域や韓国、オーストラリアなど海外の国から上映を順次スタートさせる戦略に方向転換。日本では9月18日公開予定ですが、多くの国で今月26日から公開が始まります。
本国アメリカで未公開の大作が海外で先行公開されるだけでなく、ハリウッド映画のおひざ元LAでは当面の間は見られない可能性も高く、ハリウッド映画界の常識が覆る異常事態ともいえますが、これも劇場公開を優先すればゆえのこと。このコロナ禍で劇場公開を断念してストリーミング配信となった作品も多くあるだけに、英断だったのではないでしょうか。
大都市の映画館がオープンしない以上、2億ドル超えといわれる製作費を回収するのは難しいかもしれませんが、映画ファンが再び映画館に足を運んでくれることを誰もが期待していることは間違いありません。そのための一歩をようやく踏み出せたというのは、ハリウッドにとっては明るい兆しとなることでしょう。
9月3日の週末は夏の終わりを意味するレイバーデー(労働者の日=今年は9月7日)ウイークエンドの連休に当たることから、今年は多くの映画ファンが「TENET テネット」を見るために州を越えて旅行に出かけることも十分に考えられます。いずれにしても、映画ファンのみならず劇場主も製作者も誰もが待ちわびていた映画館の再開に向けたカウントダウンは始まっています。
【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)





