今年もハリウッドの賞レースの季節がやってきました。来年1月23日のアカデミー賞ノミネーション発表にはまだちょっと気が早いですが、これから続々と発表される前哨戦を前に現時点で2024年のアカデミー賞の有力候補に名乗りを上げている作品を紹介します。
■オッペンハイマー
クリストファー・ノーラン監督が、監督、脚本、プロデューサーを務め、「原爆の父」と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマー氏の生涯を描いた作品。日本では未公開ですが、アメリカでは7月に公開されて大ヒット。3時間に及ぶ長作ながら同日公開された「バービー」とかけあわせて「バーベンハイマー」という造語がネットを席巻するなど、今年のハリウッドを代表するヒット作の一つとなっています。難しいテーマでR指定ながら大ヒットした本作は、「ダークナイト」シリーズや「インセプション」などを世に送り出してきたノーラン監督の監督賞はもちろん、作品賞、脚色賞、演技部門など主要部門に加え、技術部門でもノミネートが有力視されています。
■バービー
マテル社の着せ替え人形バービーを実写化した「バービー」も、有力候補に名を連ねています。巷にはタイアップ商品が溢れ、ピンクが大流行するなどこの夏全米で社会現象レベルの大ヒットとなった「バービー」は、商業的な大成功だけでなく、批評家からも高評価を得ています。単なる着せ替え人形の世界を描いた作品ではなく、社会問題に対する風刺に満ちたコメディでもあり、ビジュアルや斬新なアイディア、多様性は幅広い層に支持されています。作品賞、グレタ・ガーウィグ監督の監督賞、マーゴット・ロビーの主演女優賞、ケン役ライアン・ゴズリングの助演男優賞、脚本賞に衣装、美術など複数部門での候補入りが期待されています。
■マエストロ:その音楽と愛
アカデミー賞8部門にノミネートされた「アリー/スター誕生」(18年)で監督デビューを果たしたブラッドリー・クーパーが、メガホンを取った長編2作品目「マエストロ:その音楽と愛」も複数部門でのノミネートが期待される作品です。12月に劇場公開予定の本作は、20世紀を代表する米指揮者で「ウエストサイド物語」の音楽を手がけたことなどで知られる作曲家レナード・バーンスタインを描いた伝記で、クーパーが主演も務めています。プレミア上映されたベネチア国際映画祭では、ストライキの影響でクーパーが欠席したものの7分間のスタンディングオベーションが送られました。クーパーは主演男優賞ノミネートが確実視されています。
■キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
レオナルド・ディカプリオと巨匠マーティン・スコセッシ監督が6度目となるタッグを組んだ「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」は、アメリカの歴史上最も陰湿な犯罪と呼ばれた石油採掘の利権を巡って実際に起きたオーセージ族の虐殺を題材にした作品です。原作は、17年に出版されてベストセラーとなったノンフィクション「花殺し月殺人-インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」で、今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭でお披露目されて9分に及ぶスタンディングオベーションで大絶賛されました。作品賞、監督賞、ディカプリオの主演男優賞にロバート・デ・ニーロの助演男優賞ノミネートなどが期待されています。
■アメリカン・フィクション
アカデミー賞前哨戦として注目を集めるトロント国際映画祭で観客賞を受賞して注目を集めているのが、「ウォッチメン」などテレビドラマで活躍する脚本家コード・ジェファーソン氏の監督デビュー作となった「アメリカン・フィクション」。「黒人らしさが足りない」とのいう理由から売れない小説家が、ステレオタイプの黒人らしい典型的な小説をやけくそで書いて大成功を収める風刺コメディ。作品賞のほか「007」シリーズのフェリックス・ライター役などで知られるジェフリー・ライトの主演男優賞などでも候補入りが期待されています
■ザ・ホールドオーバーズ
トロント国際映画祭で最高賞となる観客賞の次点に輝いた「ザ・ホールドオーバーズ」は、「サイドウェイ」(04年)「ファミリー・ツリー」(11年)で2度アカデミー賞脚色賞を受賞しているアレクサンダー・ペイン監督が6年ぶりにメガホンを取ったヒューマンコメディです。主演は「サイドウェイ」と同じポール・ジアマッティで、70年代の米東部の全寮制学校を舞台にクリスマス休暇を共に過ごすことになった堅物教師と問題を抱えた家に帰れない生徒の2週間を描いた物語です。作品賞など複数部門での候補入りが期待されています。
【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)








