今年もハリウッドが1年で最も華やかになるアカデミー賞の季節がやってきました。長期化したストライキの影響も懸念されましたが、23日に各部門のノミネートが発表され、2024年のアカデミー賞候補が出揃いました。

今年も様々なサプライズやドラマがありました。予想外の落選から史上初の快挙まで、第96回アカデミー賞ノミネーションを振り返ります。

クリストファー・ノーラン監督(08年7月撮影)
クリストファー・ノーラン監督(08年7月撮影)

■「オッペンハイマー」が最多ノミネート

大方の予想通り、クリストファー・ノーラン監督が「原爆の父」を描いた「オッペンハイマー」が、作品賞、監督賞、キリアン・マーフィの主演男優賞、脚色賞など主要部門を含む13部門に名を連ねました。俳優部門では、ロバート・ダウニー・Jr.が助演男優賞、エミリー・ブラントも助演女優賞にノミネートされており、主要部門をほぼ独占しています。

「ダンケルク」(17年)では作品賞と監督賞、「インセプション」(10年)でも作品賞と脚本賞、「メメント」(00年)で脚本賞にノミネートされているノーラン監督ですが、これまで1度もアカデミー賞を受賞しておらず、大本命とされる今作で初受賞が期待されています。

■「バービー」のマーゴット・ロビーとグレタ・ガーウィグ監督が候補から漏れる予想外のハプニング

「オッペンハイマー」との同日公開で話題を集め、昨年の映画界を席巻した「バービー」は、作品賞、ケン役ライアン・ゴズリングの助演男優賞、脚色賞、美術賞、歌曲賞など8部門で候補入りするも、バービーを演じたマーゴット・ロビーとメガホンを取ったグレタ・ガーウィグ監督はノミネートされませんでした。この結果に、メディアもネットも「冷遇」「バービーの映画で主役がノミネートされないなんて」と失望の声で溢れ、ゴズリングも「バービーなしにケンは存在しない」と異例の声明を発表するなど、波紋を広げています。

候補入りが確実視されていたロビーが落選する一方、バービーの持ち主の母グロリア役を演じたアメリカ・フェレーラが、助演女優賞にサプライズノミネートを果たしました。

映画「バービー」ジャパンプレミアイベントに臨むグレタ・ガーウィグ監督(23年8月撮影)
映画「バービー」ジャパンプレミアイベントに臨むグレタ・ガーウィグ監督(23年8月撮影)

■レオナルド・ディカプリオも主演男優賞で予想外の落選

マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオがタッグを組んだ「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」は、作品賞、監督賞、リリー・グラッドストーンの主演女優賞などで候補入りしたものの、ディカプリオは主演男優賞にノミネートされませんでした。

主人公の妻を演じたグラッドストーンは先住民族の女性として初めてアカデミー主演女優賞にノミネートされる快挙となり、ロバート・デ・ニーロも助演男優賞で候補入り。また、81歳のスコセッシ監督は、監督賞カテゴリーで史上最高齢のノミネート記録を更新し、10度目のノミネートで「ディパーテッド」(07年)以来2度目の受賞に期待が寄せられています。一方、同作は脚色賞を逃すサプライズもありました。

■「カラーパープル」は作品賞を逃し、助演女優賞のみのサプライズ

95年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の不朽の名作「カラーパープル」をミュージカル映画化した「カラーパープル」は、高い評価を得ていたものの作品賞で候補入りを果たすことができませんでした。ダニエル・ブルックスの助演女優賞1部門のみという結果も、大きなサプライズと受け止められています。

■日本からは3作品が候補入りの快挙

ゴールデングローブ賞を受賞した宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞、役所広司主演の「パーフェクト・デイズ」は国際映画賞、「ゴジラ-1.0」も日本映画として初めて視覚効果賞にノミネートを果たし、日本から同時に3作品が選ばれました。

国際映画賞は「ドライブ・マイ・カー」以来2年ぶりのノミネートで、同作に続く受賞も期待されています。また、宮崎監督にとっては、01年の「千と千尋の神隠し」以来となる同賞受賞となるか注目されます。

授賞式は3月10日にハリウッドのドルビー劇場で行われます。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)