3月10日にハリウッドのドルビー劇場で発表される今年のアカデミー賞には、3本の日本作品がノミネートされています。

宮崎駿監督の最新作「君たちとどう生きるか」が長編アニメ賞に、役所広司主演でヴィム・ヴェンダース監督がメガホンを取った「PERFECT DAYS」が国際長編映画賞に、そして山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞にそれぞれ名を連ねています。

役所広司(右)とヴィム・ヴェンダース監督(2022年5月撮影)
役所広司(右)とヴィム・ヴェンダース監督(2022年5月撮影)

また、「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」(17年)と「スキャンダル」(19年)で2度メイクアップ&ヘア賞を受賞している日本出身のメイクアップアーティストのカズ・ヒロ氏も、ブラッドリー・クーパーが監督・主演を務めた「マエストロ:その音楽と愛と」で5度目のノミネートを果たし、3度目の受賞を狙っています。

日本作品やアーティストの受賞が期待される第96回アカデミー賞授賞式ですが、これまでも多くの日本作品や日本人がアカデミー賞にノミネートされ、受賞もしています。歴代のオスカー受賞作品と受賞者、また主なノミネート作品・俳優・監督を振り返ります。

■カズオ・イシグロ氏 脚色賞ノミネート(2023年)

昨年のアカデミー賞で脚色賞にノミネートされたのは、黒澤明監督の不朽の名作「生きる」(52年)を第2次世界大戦後のイギリスを舞台によみがえらせた「生きるLIVING」で脚本を担当したカズオ・イシグロ氏。ノーベル賞とブッカー賞を受賞した小説家で、脚本家、作詞家でもあるイシグロ氏は、長崎生まれイギリス育ちの日本人です。

■「ドライブ・マイ・カー」 国際長編映画賞受賞、4部門ノミネート(2022年)

アカデミー賞授賞式後に取材に応じた、左から霧島れいか、濱口竜介監督、西島秀俊、岡田将生(2022年3月撮影)
アカデミー賞授賞式後に取材に応じた、左から霧島れいか、濱口竜介監督、西島秀俊、岡田将生(2022年3月撮影)

一昨年の授賞式で国際映画長編賞に輝いたのは、濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」。同作は日本作品として初となる作品賞にもノミネートされたほか、監督賞と脚色賞でも候補入りする快挙となりました。濱口監督は、受賞は逃したものの1966年の勅使河原宏監督(「砂の女」)、1986年の黒澤明監督(「乱」)に次ぐ、日本人3人目の監督賞ノミネートを果たしています。

■「万引き家族」 外国語映画賞(現国際長編映画賞)ノミネート(2019年)

「万引き家族」大ヒット御礼舞台あいさつ 後列左から是枝裕和監督、山田裕貴、リリー・フランキー、高良健吾、前列左から城桧吏、佐々木みゆ(2018年6月撮影)
「万引き家族」大ヒット御礼舞台あいさつ 後列左から是枝裕和監督、山田裕貴、リリー・フランキー、高良健吾、前列左から城桧吏、佐々木みゆ(2018年6月撮影)

カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督の「万引き家族」は、外国語映画賞にノミネートされましたが、惜しくも受賞を逃しました。

■「未来のミライ」 長編アニメ映画賞ノミネート(2019年)

細田守監督の大ヒット作「未来のミライ」は惜しくも受賞は逃しましたが、長編アニメ映画賞にノミネートされています。

同部門にはこれまで、ジブリ作品「かぐや姫物語」(13年)「思い出のマーニー」(15年)「レッドタートルある島の物語」(16年)も候補入りしています。

■「おくりびと」 外国語映画賞(現国際長編映画賞)受賞(2009年)

オスカー像を手に記念写真に納まる「おくりびと」主演俳優の本木雅弘(左)と滝田洋二郎監督(2009年2月撮影)
オスカー像を手に記念写真に納まる「おくりびと」主演俳優の本木雅弘(左)と滝田洋二郎監督(2009年2月撮影)

滝田洋二郎監督がメガホンを取り、本木雅弘が納棺師を演じた「おくりびと」は、日本映画初の外国語映画賞を受賞。※名誉賞としては「宮本武蔵」(56年)「地獄門」(55年)などが受賞

■「つみきのいえ」 短編アニメ賞受賞(2009年)

加藤久仁監督の「つみきのいえ」が、日本人初となる短編アニメ賞を受賞。この年は、「おくりびと」と同作が、日本映画としてダブル受賞する快挙となりました。

■菊池凛子 助演女優賞ノミネート(2007年)

菊池凛子(07年2月撮影)
菊池凛子(07年2月撮影)

ハリウッドデビュー作となったアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「バベル」で、ろうあの女子高生を演じて高い評価を受けた菊池凛子は、助演女優賞にノミネート。この作品で、ゴッサム賞新人女優賞などを受賞しています。

■たそがれ清兵衛 外国語映画賞(現国際長編映画賞)ノミネート(2004年)

アカデミー賞授賞式後に会見を行った山田洋次監督(左)と真田広之(2004年3月撮影)
アカデミー賞授賞式後に会見を行った山田洋次監督(左)と真田広之(2004年3月撮影)

山田洋次監督がメガホンを取り、ハリウッドで活躍する真田広之が主演した「たそがれ清兵衛」は、国内外で高い評価を受け、この年の外国語映画賞にノミネートされました。

■渡辺謙 助演男優賞ノミネート(2004年)

「ラストサムライ」特別プレミア試写会で記念撮影に臨む(左から)エドワード・ズウィック監督、渡辺謙、トム・クルーズ、真田広之、小雪(2003年11月撮影)
「ラストサムライ」特別プレミア試写会で記念撮影に臨む(左から)エドワード・ズウィック監督、渡辺謙、トム・クルーズ、真田広之、小雪(2003年11月撮影)

「たそがれ清兵衛」と同じ年に、渡辺謙はトム・クルーズ主演の「ラストサムライ」で助演男優賞に初ノミネートされる快挙となり、この年も日本がらみ作品のノミネートが相次ぎ話題となりました。

■「千と千尋の神隠し」 長編アニメ賞受賞(2003年)

宮崎駿監督(2013年9月6日撮影)
宮崎駿監督(2013年9月6日撮影)

「君たちはどう生きるか」で2度目の受賞が期待される宮崎監督は、「千と千尋の神隠し」で初めてのオスカーを獲得しています。また、「ハウルの動く城」(05年)「風立ちぬ」(13年)でも同賞にノミネートされています。

宮崎監督は14年に、黒澤監督以来24年ぶりに映画界に多大な貢献を果たした映画人をたたえる「名誉賞」も受賞しています。

■伊比恵子さん 短編ドキュメンタリー賞受賞(1999年)

伊比恵子さん(2000年5月撮影)
伊比恵子さん(2000年5月撮影)

伊比恵子さんは、「ザ・パーソナルズ~黄昏のロマンス~」で短編ドキュメンタリー賞に輝き、日本人としては9人目となるオスカー受賞を果たしました。

■石岡瑛子さん 衣装デザイン賞受賞(1993年)

アートディレクター、デザイナーとして世界的に活躍した石岡瑛子さんは、フランシス・フォード・コッポラ監督の「ドラキュラ」で衣装デザイン賞を受賞。また、遺作となった「白雪姫と鏡の女王」(12年)でも受賞は逃したものの、同賞に再びノミネートされています。

■黒澤明監督 名誉賞受賞(1990年)

映画「影武者」で指揮を執る黒澤明監督(1979年撮影)
映画「影武者」で指揮を執る黒澤明監督(1979年撮影)

長年の功績が評されて90年に名誉賞を受賞した黒澤監督は、1952年に「羅生門」で現在の国際長編映画賞にあたる「名誉賞」を日本映画として初めて受賞。76年には「デルス・ウザーラ」で2度目の名誉賞を手にしており、日本人最多となる3度の受賞を記録。また、86年には「乱」で監督賞にもノミネートされています。

■坂本龍一さん 作曲賞受賞(1988年)

坂本龍一さん(2016年12月撮影)
坂本龍一さん(2016年12月撮影)

坂本龍一さんは、ベルナルド・ベルトルッチ監督がメガホンを取った「ラストエンペラー」の音楽を担当し、日本人として初めて作曲賞を受賞。

■ワダ・エミさん 衣装デザイン賞受賞(1986年)

「乱」衣装デザインのワダ・エミさん(04年1月撮影)
「乱」衣装デザインのワダ・エミさん(04年1月撮影)

日本映画のみならずチャン・イーモウ監督の「HERO」(02年)など国際的に活躍したワダ・エミさんは、黒澤明監督の「乱」で衣装デザイン賞を受賞しています。

■ナンシー梅木さん 助演女優賞受賞(1958年)

帰国歓迎レセプションで歌うナンシー梅木さん。ピアノ伴奏は中村八大さん(1957年1月撮影)
帰国歓迎レセプションで歌うナンシー梅木さん。ピアノ伴奏は中村八大さん(1957年1月撮影)

北海道生まれのナンシー梅木さんは、マーロン・ブランド主演のハリウッド映画「サヨナラ」で東洋人俳優として初のアカデミー賞を受賞。ハリウッドデビュー作の演技が高く評価され、アメリカとイギリス以外の俳優としても初めて同賞を受賞する快挙を成し遂げました。また、この年は、日本人の早川雪洲も「戦場にかける橋」で助演男優賞にノミネートされています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)