「君たちはどう生きるか」の長編アニメ賞、「ゴジラ-1.0」の視覚効果賞、「パーフェクト・デイズ」の国際長編映画賞と、日本から3作品がノミネートされているアカデミー賞授賞式が、いよいよ3月10日にハリウッドのドルビー劇場で行われます。

96回目を迎える今年のアカデミー賞は、クリストファー・ノーラン監督が原爆の父を描いた「オッペンハイマー」が最多13部門にノミネートされており、最多受賞が確実視されています。

10日の授賞式を前に、現地から予想をお届けします。

クリストファー・ノーラン監督(08年7月撮影)
クリストファー・ノーラン監督(08年7月撮影)

■大本命は前哨戦を独走する「オッペンハイマー」、主要4部門の受賞なるか!?

原子爆弾を開発した理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を映画化した「オッペンハイマー」は、作品賞、ノーラン監督の監督賞、キリアン・マーフィーの主演男優賞、ロバート・ダウニー・Jrの助演男優賞、エミリー・ブラントの助演女優賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞、音響賞、美術賞、衣装デザイン賞、メイク&ヘア賞の13部門に名を連ねています。

英国アカデミー賞(BAFTA)では作品賞や監督賞、主演男優賞、助演男優賞など7冠に輝き、全米俳優組合(SAG)賞でも最高賞にあたるキャスト賞を含む3冠、ゴールデングローブ賞でも作品賞や監督賞など5部門を受賞するなど、今年の賞レースを席巻しています。

バラエティ誌は、主要部門では作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞の4部門受賞を予想しています。ロサンゼルス・タイムズ紙も作品賞、監督賞、助演男優賞の受賞を予想していますが、主演男優賞はマーフィーと「ホールドオーバーズ」のポール・ジアマッティの一騎打ちと予想しており、意見が割れているようです。また、脚色賞はライバル「バービー」の受賞を予想しています。

ローリングストーン誌は、作品賞でサプライズがあるならマーティン・スコセッシ監督の「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」の受賞を予想。また、助演男優賞は「哀れなるものたち」のマーク・ラファロがサプライズ受賞する可能性もあると予想しています。

マーティン・スコセッシ監督(2012年2月撮影)
マーティン・スコセッシ監督(2012年2月撮影)

■主演女優賞はリリー・グラッドストーンが最有力

「キラー・オブ・ザ・フラワームーン」でレオナルド・ディカプリオ演じる主人公と結婚する先住民を演じたリリー・グラッドストーンは、これまでSAG賞、ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)、ニューヨーク映画批評家賞などで主演女優賞を受賞しており、今年の賞レースをリード。アメリカの先住民の女優として初めて主演女優賞にノミネートされたグラッドストーンが受賞すれば初の快挙となるだけに、受賞に期待が持たれています。ロサンゼルス・タイムズ紙やバラエティ誌はじめ多くのメディアが、グラッドストーンの受賞を予想。サプライズがあるとすれば、エマ・ストーンのBAFTAに続く受賞を予想しています。

一方、助演女優賞は、「ホールドオーバーズ」のダバイン・ジョイ・ランドルフが最有力候補に名を連ねています。

■日本勢の受賞は?

興行のみならず批評家からも高い評価を受けている「君たちはどう生きるか」は、先日発表されたBAFTAで長編アニメ部門を受賞。ほかにもゴールデングローブ賞、ニューヨーク映画批評家協会賞とロサンゼルス映画批評家協会賞などにも輝いており、宮崎駿監督は2003年の「千と千尋の神隠し」に次ぐ2度目のオスカー獲得が期待されています。

一方、アニメ界のアカデミー賞と呼ばれるアニー賞では、「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」が長編アニーション作品賞を含む7冠を達成しており、ロサンゼルス・タイムズ紙は「スパイダーマン」の受賞を予想するなど下馬評は割れています。

国際長編映画賞は、アウシュヴィッツ強制収容所の隣に住む家族を描いたイギリスの「関心領域」が最有力候補に浮上。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した後、各地の映画祭でも数々の賞を受賞し、BAFTAでは非英語作品賞と英国作品賞の2冠に輝いた同作のオスカー受賞を予想する声が高まっています。

「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督(2023年11月撮影)
「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督(2023年11月撮影)

昨年12月にアメリカで公開されて大ヒットとした「ゴジラ-1.0」は、日本映画として史上初めて視覚効果賞にノミネートされ、受賞も期待されています。この部門には、他に「ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE」「ナポレオン」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」「ザ・クリエーター/創造者」がノミネートされています。「ゴジラ」と渡辺謙も出演しているギャレス・エドワーズ監督の「ザ・クリエーター/創造者」の対決になると予想されています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)