ファンの声援に手を振り応える花組トップの明日海りお(2019年11月24日撮影)
ファンの声援に手を振り応える花組トップの明日海りお(2019年11月24日撮影)

宝塚花組トップの明日海りおの退団公演の千秋楽を取材した。久しぶりにさよならショーを見て、続くパレードも取材したが、その熱気に気分も高揚した。

劇場前に展開されるパレードはいつもながらの華やかさだった。白いそろいのユニホーム姿のファンが両サイドに並び、大きな拍手を受けながら、正装の黒紋付きに緑のはかま姿の明日海はゆっくりとタカラジェンヌとしての最後の姿を見せていく。ファンの「すべてが好きでした。フォーエバー男役、明日海りお、最高!」の大合唱に送られて劇場を後にした。

この日、宝塚側から発表されたファンの人数はのべ1万人。宝塚史上最高かと思いきや、上には上があった。15年に退団した柚希礼音の時は1万2000人を数え、それが史上最高という。1万人は00年の姿月あさと、8000人は01年の真琴つばさ、06年の和央ようか、09年の瀬奈じゅん、17年の早霧せいな、朝夏まなとが記録している。意外だったのは、10年に1人の逸材と言われた天海祐希で、95年に退団した時は6000人だった。

さよならショーの後のあいさつ、退団会見の明日海の言葉には宝塚愛があふれた。「宝塚にすべてをささげました。男役として生きることに、自分自身を懸けてきました」。さらに「もうタカラジェンヌとして夢を追うことはできませんが、ここに夢を継ぐすてきな仲間がおります。これからもこの愛する舞台に花を咲かせていく仲間たちが恥ずかしい思いをしないよう、卒業生として清く正しく美しく生きてまいります」と誓った。「12時を過ぎると、タカラジェンヌじゃなくなる。今、このまま消えてしまいたいほど、宝塚が大好きです。宝塚、フォーエバー」とも叫んだ。

千秋楽の模様は47都道府県、香港、台湾の189カ所の映画館などでライブ中継された。柚希の時でも約50カ所ほどだったから、今回は宝塚史上最大規模だった。ほとんどが満員だったというから、10万人を超えるファンが、明日海の最後の姿を目に焼き付けたのだろう。

あいさつの中で、「もう明日からはエセジェンヌなので、街で見かけたら、声をかけてください」と話すと、会場からは「えーっ」と歓声が上がった。宝塚では生徒への声掛けはご法度だっただけに、ファンの驚きも理解できる。会見で「明日の予定はありません」と話したが、人気・実力を兼ね備えた明日海が「女優」として登場する日も近いだろう。舞台になるのか、ドラマになるのか。彼女の去就が楽しみだ。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

さよならショーを終え会見する花組トップの明日海りお(2019年11月24日撮影)
さよならショーを終え会見する花組トップの明日海りお(2019年11月24日撮影)