4日の歌舞伎座、5日の新橋演舞場、6日の国立劇場と、3日連続の歌舞伎通いで今年の舞台観劇がスタートしました。

演舞場は、本来なら昨年の襲名公演で「13代目市川團十郎白猿」となっているはずだった市川海老蔵の座長公演「初春海老蔵歌舞伎」。例年なら、昼夜で演目を変えて、新作歌舞伎にも挑むなどフル回転していましたが、今年はコロナ禍もあって、昼夜とも同じ演目で、上演時間も短縮。海老蔵は歌舞伎十八番「毛抜」に、長男の堀越勸玄くんとの舞踊「橋弁慶」の出演だけでした。長女の市川ぼたんも「藤娘」を愛らしく踊り、客席は満員の人気でした。

そんな海老蔵一家の舞台を見ていて、気になったのは、今年こそ團十郎襲名公演があるのかということです。昨年は5~7月までの3カ月間、歌舞伎座で行われる予定でした。しかし、緊急事態宣言が発令された4月7日に松竹から延期が発表されました。それ以降、松竹から襲名公演についての発表がないので、これは勝手な予想になりますが、今年もないのではないかと思っています。

都内の感染者が7日と8日の2日連続で2000人を超え、緊急事態宣言が発令された現状では、昨年のように5月から襲名公演を行うのは困難でしょう。何よりも、團十郎襲名は歌舞伎界最大のイベントですから、客席数を減らし、上演時間も短縮してという状況では盛り上がりにも欠けてしまいます。コロナ禍が終息し、世の中全体が「團十郎」襲名を祝える時まで待つのがいいと思います。

ただ、そこでネックになるのは勸玄くんの8代目市川新之助襲名です。通常、御曹司の初舞台は6歳か7歳ですが、襲名公演が来年5月に延期されるとしたら、勸玄くんは9歳での初舞台、新之助襲名となります。今月の「橋弁慶」で牛若丸を演じている姿を見ていると、昨年と比べると一回り大きくなったなという印象でした。

海老蔵は「初春海老蔵歌舞伎」の会見でも、襲名延期について「自分のことより、予定通りなら7歳で新之助を襲名するはずだった勸玄の気持ちを思います」と、新之助襲名を心待ちにしていた勸玄くんを思いやっていました。團十郎襲名とともに新之助襲名の今後も気になるところです。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)