両親の愛を一身に受けていた1人っ子が、弟の出現に疎外感を覚える。映画にするには当たり前過ぎる題材だが、昨春、実写版「美女と野獣」を抑えて全米1位となった作品だ。

 「マダガスカル」シリーズのトム・マクグラス監督は、その弟に「見た目は赤ちゃん、中身はおっさん」という奇想天外な味付けをして、親子連れの鑑賞なら、むしろ親の笑いを誘う。

 ビートルズの「ブラック・バード」が子守歌として流れ、祖父母世代の心もくすぐる。中身がなぜおっさんなのかには、うなずける由来があり、それがストーリーを引っ張っていく。

 子ども目線から見上げる景色は、憧れ目線で見ていた60年代の米ホームドラマをほうふつとさせる。最新アニメ技術は立体的に表情を映し出すが、くっきりとした影を引きずるピカピカのキャラクターや喜怒哀楽の明快さは往年のディズニー・アニメに通じている。

 弟ボス・ベイビーの日本語版の声はムロツヨシが担当。アクの強さをそのままキャラにのせ、メリハリが利いている。7歳の兄役は、芳根京子が少年の声で演じている。連ドラ「海月姫」のオタク娘といい、成り切りの才能に驚いた。【相原斎】

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